montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ケイト・ブッシュ ドリーミング (2018―11)

f:id:montana_sf16:20230730104234j:image🎦The Dreaming - YouTube

「狂っている」、ケイト・ブッシュは本作発表の約10年後となる1993年12月にインタビューに答えて、この作品をそう表現しています。「3年ほど前に聴き直したけど信じられなかった。大きな怒りがある。『私はアーティストよ!』でいっぱいだ」。ケイト・ブッシュの4枚目となるアルバム「ドリーミング」は、72トラックも使って執拗なまでの作り込みがなされています。本作完成後、ケイトは精神を病んで入院したとデマが飛び交う問題作となりました。本人までが後に「狂っている」と振り返るのですから凄いです。アルバムは全英3位のヒットとなりましたけど、評論家受けはよくありませんでした。ポップさが残っていた前作に比べて、大いに実験的なサウンドに拒絶反応を示す人も多かった。ところが、時は流れてアルバムは復権し、今ではケイトの代表作にカウントされています。何を隠そうこの評論家の態度は自分とシンクロしているのが恥ずかしいです。前作が大好きだった自分は発売と同時に本作を買いました。しかし、どうにも馴染めず、あまり聴かなかったことを覚えています。そして時は下り、今では楽しく聴いております。決して難解な音楽ではありません。しかし、ロックばかり聴いていた当時は、この作り込みがしんどく思えたものでした。決してロック的ではなくて、演劇的というかミュージカル的というか、よく言えば総合芸術的、悪く言えば音楽でないような作りを受容する耳がなかった。歳をとるにしたがって、そうした耳が出来てきたのでしょうか、ケイト・ブッシュの作り出す極上のサウンドがうまく腑に落ちるようになって来ました。~続⤵️

f:id:montana_sf16:20230730105540j:image f:id:montana_sf16:20230730105601j:image f:id:montana_sf16:20230730105613j:image 
f:id:montana_sf16:20230730105627j:image f:id:montana_sf16:20230730105639j:image🎦Kate Bush - Sat in Your Lap - Official Music Video - YouTube

サンプリング機能を持ったフェアライトCMIを駆使したサウンドに素直に導かれるようになりました。本作はケイトにとって初めてのセルフ・プロデュース作品です。前作の共同プロデューサーであり、デビュー作から寄り添ってきたエンジニアのジョン・ケリーとも敢えて訣別する選択をしています。自ら棘の道を選んだわけです。前作完成後に書きだした新曲は、「これまでに書いたどんな曲とも異なっていました」とケイトは言います。「よりリズミックで、自分の音楽にとって完全に新しい側面となっている」。これまでの作品から真の旅立ちをするのであると意気込んでいます。タイトル曲はオーストラリアのアボリジニーに題材をとった実験的な曲ですし、「夜舞うつばめ」はチーフタンズのメンバーも参加したアイリッシュ風味溢れる曲、「フーディニ」は世紀の魔術師、「ピンを引き抜け」はベトナム戦争を扱った曲、「狂気の家」はシャイニングらしいです。それぞれの曲が入魂の力作であることが見て取れます。楽器もブズーキやらバグパイプ、ディジェリドゥーなども用いつつ、フェアライトで締める。納得いくまで何度もやり直したそうです。無理解に思える周囲を蹴散らして進んでいくケイトのアーティスト魂が光輝いています。若いケイトがアーティストとしての自己を確立するために必要な作品であったことでしょう。既成のフォーマットからの逸脱を企図して立派にやり遂げました。しかも美しいサウンドに結実したところが非凡です。時とともに評価が高まった見事な作品です。

The Dreaming / Kate Bush (1982 EMI)

参照:Kate Bush Encyclopedia