montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ビル・エヴァンス&ジム・ホー ル アンダーカレント(2020―7)

f:id:montana_sf16:20230816155102j:image f:id:montana_sf16:20230816155947j:image💿️Undercurrent - Bill Evans & Jim Hall - YouTube

寡聞にしてギターとピアノのデュオ・アルバムが存在することを知りませんでした。それも、ビル・エヴァンスジム・ホールという超大物ではありませんか。彼らはもう一枚デュオ・アルバムを発表しているようですけど、こちらが最初です。しかし、考えてみればピアノもギターもどちらもリズムとメロディーの両方を表現することができるわけですから、リズム・セクションなしで二つの楽器がデュオを奏でるのはおかしくもなんともありません。どちらも花形なので折り合いが悪いと勝手に思い込んでいるせいでしょうか。もう一つの不思議はエヴァンスとホールの組み合わせです。二人は1歳違いの同世代なのですが、亡くなったのはエヴァンスが30年以上も早い。そうなるとこの二人が同じ時代を生きて、こうしてデュエットを奏でていることが不思議に感じてしまいます。エヴァンスは1929年、ホールは1930年の生まれです。二人が初めて出会ったのは1956年のことだそうです。それぞれが所属していたバンドの対バン形式のライブでの出会いでした。まだ二人とも二十代半ばの気鋭のミュージシャンとしての出会いです。その後、二人は何度か共演する機会を得て意気投合したのでしょう。本作「アンダーカレント」がホールのデュオ・アルバムというコンセプトで企画された時に、ホールはエヴァンスを相手方に選びました。こうして本作が1962年4月と5月にニューヨークで録音されました。

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f:id:montana_sf16:20230816181209j:image💿️My Funny Valentine - YouTube

エヴァンスにとっては大変な時期の制作です。「ワルツ・フォー・デビー」など世に名高い「リバーサイド四部作」を制作した自身のピアノ・トリオからベースのスコット・ラファロを失い、一時トリオでの活動中止を余儀なくされていました。トリオはこの作品の頃には新たなメンバーを入れて活動を再開していますが、激動期であったことは間違いありません。一方のホールはサイドマンを中心に順調な活動を続けており、エラ・フィッツジェラルドを経て、ソニー・ロリンズのバンドに在籍中でした。そんな二人が一気呵成に制作したアルバムです。アルバムはスタンダードの名曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」で始まります。もうこの曲を聴いただけでアルバムの充実具合が分かります。「ジャズが表現しうる最高の美しさを捉えた名盤」です。エヴァンスのピアノとホールのギターが、一つの曲の中で旋律と伴奏を自在に入れ替えながら演奏しています。時にホールのギターがストロークするのですが、そうでなければギターとピアノが混然一体となって聴こえてきます。それだけインタープレイが緊密です。どちらがリーダーというわけではなく、とても親密かつ濃密な対話が続いていきます。そしてその音色はとにかく美しい。二人の作品から想像していた以上に音の粒粒が際立っています。一見静かで淡々としたサウンドの底にアンダーカレントはほとばしっています。ジャケットは写真家トニ・フリッセルによる水中バレエの写真です。ジャケットには何の文字もありません。この当時のジャケットにしては攻めています。それだけの自信が溢れるジャケットです。アルバムのサウンドはこの写真のまんまですから。

Undercurrent / Bill Evans & Jim Hall (1962 United Artists)