💿️Weather Report (Heavy Weather) - YouTube
1970年代に10代を過ごした自分は、当時の常識としていずれロックは卒業するものだと思っていました。そして卒業するとまずはフュージョンを聴くものだと教わっており、その代表として名前が挙がるのがウェザー・リポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーでした。なんせ初めて買ったマイルスのアルバム(※ビッチェズ・ブリュー)の帯にはこう書いてありました。『マイルス、ハービー(※ハンコック)、ウェザー、フュージョンはここから始まった。』と。そのため、ウェザー・リポートなどは、上級者のための音楽、今でいうところのスクール・カースト上位者の聴く音楽というあまりよろしくないイメージを当時はもってしまっていました。しかし、あれから40年、いまだにロックを卒業できていませんが、フュージョンにはちゃんと入門しました。ウェザー・リポートはマイルス・デイヴィスの門下生だったウェイン・ショーターとジョー・ザヴィヌルが中心となって1970年に立ち上げたバンドです。発足当時からスーパーグループだったわけですが、1977年の本作「ヘヴィー・ウェザー」で一段とギアが上がりました。初期のベーシスト、ミロスラフ・ヴィトウスやアルフォンソ・ジョンソンには申し訳ないことですが、その理由は夭折の天才ベーシスト、ジャコ・パストリアスが本作品から本格的に参加したことによります。本作品は商業的にもバンド史上一番の成績を収めています。ライナーノーツには有名なエピソードとして、パストリアスがザヴィヌルを出待ちして、強引に自らのデモ・テープを渡し、「ボクは、地球上に存在する最高のベーシストだ」と言い寄った話が紹介されています。実際に凄いからこそ映える逸話です。
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パストリアスは前作に2曲のみ参加しているのみですから、「ヘヴィー・ウェザー」が本格的なデビューとなります。しかし、デビューと同時にザヴィヌルとプロデューサーの座を分け合っていますから、それだけ彼の貢献が大きいということがよく分かります。ショーターとザヴィヌルという手練れのアーティストと新人が互角に渡り合うだけでも凄いことなのに、この作品はまるでパストリアスのリーダー作品のようになっています。それほどベースばかりに耳を奪われてしまいます。面白いものです。パストリアスの逸話第二弾は、これも有名な話ですが、デモ・テープを聴いたザヴィヌルがパストリアスの弾いていたエレキ・ベースの音をウッド・ベースの音だと間違えたという話です。それほどアコースティックな雰囲気を醸し出すナチュラルなベースだということです。いい話ですネ。本作品に参加しているメンバーは上掲の三人に加えてドラムのアレックス・アクーニャとパーカッションのマノロ・バドレーナの二人です。彼らの手になる「ルンバ・ママ」のラテン風味は本作品のいいアクセントになっていて、アルバムの立体感に貢献しています。本作品の中で最も有名な曲は冒頭の「バードランド」です。「ヘヴィー・ウェザー」というタイトルからは拍子抜けするような爽やかな曲で、後にマンハッタン・トランスファーのヴォーカリーズ・バージョンが大ヒットしたことでも知られています。これもベースがかっこいい曲です。この時代にジャズからロックに染み出してきた音楽を一般にフュージョンと称しました。その押しも押されもせぬ代表がウェザー・リポートで、そのまた代表作が本作品です。もちろん、一曲たりとも捨て曲なし、全ての曲が脳内再生可能です。個人的にはA面2曲目のバラード曲(←「お前のしるし」)における後半部のザヴィヌルのキーボードソロなど、短いながらその美しいフレーズがいまだに頭から離れません。ま、そんな感じで、フュージョン・サウンドのベンチマークとしても機能する名盤中の名盤、大名盤です。