毎度おなじみ、かなりインパクトの強いジャケットです。ヒプノシスの傑作です。ヒプノシスの語るところによると、アーティストである友人にこの音楽がオーケストラやブラスを使っていてあまりロックン・ロールでないので、誰も考えつかないような関係ないジャケットを探していると話したところ、彼が即座に「牛」と言ったので、このジャケットになったということです。いい話ですね。そんなジャケットに包まれたピンク・フロイドの5作目は初めて全英1位の座を獲得しました。発売当時のLPの帯には、「ピンク・フロイドの道はプログレッシブ・ロックの道なり」と記されていて、それがプログレッシブ・ロックの最初の使用例ということになっています。記念すべき作品です。
このアルバムは彼らの傑作として人気が高いんですが、実はフロイドのメンバーには糞味噌に言われています。発売後しばらくはライブで積極的に演奏していたようですから、全く不本意だったというわけでもなく、大成功した後から振り返ってみればということ。なのかも?🤔
アルバムはA面全部を占める超大作「原子心母」とB面は穏やかな小品3曲にミュージック・コンクレート風の曲「アランのサイケデリック・ブレックファスト」が1曲。対称的な作りになっています。面白いのは、各楽曲に熱烈なファンがいることです。いくつかレアなファンのブログを見ましたが面白いです。もちろんタイトル曲が1番目立ちますが、6つのパートからなるインスト大作で、ストリングスやブラス、コーラスを大胆に導入していて、むしろメンバーの演奏が背景に置かれている感じです。彼らの友人だった現代音楽家のロン・ギーシンが制作に携わっているのが大きいのでしょう、かなりクラシック寄りの楽曲になっています。まさに、プログレッシブ・ロックの真骨頂です。プログレをけなす形容詞に「ポンパス」すなわち、大げさとかもったいぶったとか言う意味の言葉があります。ロジャー・ウォータース自身がこの曲に対してそう批判しています。そんな意味でも真骨頂です。B面の小品は、ドラムのニック・メイソンを除く三人がそれぞれ一曲ずつ担当しています。ミニ・ウマグマですが、こちらは作風もそれほど変わらずまとまっています。特にロジャーの「もしも」は後の名作「狂気」や「炎」の先駆けと評価されているようです。最後の「アランのサイケデリック・ブレックファスト」は、いろんな生活音を取り入れた実験的な作品で、これもコアなファンがついています。ま、個人的にはさほど面白いとも思えませんでしたが?🙄
🎦Pink Floyd - One of these days - Live at Pompeii HD - YouTube
この作品は初めてのセルフ・プロデュース作品となりました。これまでの作品に比べると、落ち着いてアルバム制作に取り組んだ印象を受けます。後から振り返ればいろいろとメンバーに不満はあるのでしょうが、ピンク・フロイドがそのスタイルを確立したアルバムとして記憶に残るアルバムなのではないかと思います。邦題のセンスといい、ジャケットのセンスといい、素敵だなと思いつつも、正直 昔はあまりのクラシックっぽさになじめなかったです。大人になってから聴き直してみて、結構心地よいので改めて「良さ」を知ったという次第です。ま、先端感はしなくなったので、少し寂しかったのも事実ですが。
Atom Heart Mother / Pink Floyd (1970 Harvest)