montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

フランク・ザッパの○△□ (2013―5)

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💿️Ship Arriving Too Late To Save A Drowning Witch - YouTube

らしい邦題です。何のことかわからないところがとても素敵。残念ながら今では邦題は直訳の「たどり着くのが遅すぎて溺れる魔女を救えなかった船」となっています。これはこれで可愛いですけど。この作品からはシングル・ヒットが生まれました。ザッパ先生唯一のトップ40ヒットです。曲は、娘さんのムーン・ザッパが歌う「ヴァリー・ガール」で、超絶の演奏に乗せて、ムーンがラップというかしゃべくりをかますというものです。詞の内容は全く分かりませんが、とにかく若い女の子特有の話法であります。訳詞の総合監修をしているアダム・カウフマンによると、ヴァリー・ガールとは、「南カリフォルニア、サン・フェルナンド・ヴァレイの中流以上の家族が多く住んでいるエリアに住む、高校生くらいの年齢で超ミーハーの女の子の一群のこと」だそうです。この話し方はこの曲の影響でアメリカ全国に広がったようです。破壊力ありますね。この時、ムーンはわずかに14歳です。ブックレットには彼女が13歳の時にザッパさんのスタジオのドアの隙間から差し込んだ可愛い手紙が載せられています。歌手として自らを売り込む微笑ましい手紙で、興味があればエージェントに連絡をしてくれと書いてあります。エージェントはお母さんです。二人の写真も載っていますし、ある意味、ザッパさんのファミリー・アルバムの様相を呈しています。大作続きだった中で、ちょっとした小品の趣きのある小粋な作品です。懐かしいロイ・エストラーダが参加しているところもほっとさせる所以です。

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このアルバムのメンバーは、レイ・ホワイト、アイク・ウィリス、トミー・マース、ボビー・マーチン、エド・マン、スコット・チュニス、チャド・ワッカーマンと、これから先のザッパ先生を支える面々になっています。スティーブ・ヴァイも大活躍です。名刺代わりの一発的ですかね。そして、ムーンの引っ張られたわけではないのでしょうが、いつにもましてボーカルに工夫が凝らされています。「ノー・ナット・ナウ」ではロイ・エストラーダのファルセット、「アイ・カム・フロム・ノーウェア」ではボブ・ハリスの調子はずれのヘロヘロ・ボーカル、そして、「娘17、売春盛り」というとんでもない邦題だった曲「十代の娼婦」では、リサ・ポピエルという女性の綺麗なボーカルとなっています。演奏はとてもタイトなまとまりがあって素晴らしいです。今一つ人気がないらしいんですが、自分は大好きです。タイトル曲は久しぶりに現代音楽的な構造をもっていて、うっとりさせてくれますしね。ストラヴィンスキーの「春の祭典」からの引用も含まれています。また新しい時代に入ってきたなという面持です。80年代のザッパ先生のプロト・タイプがここにあると言っていいでしょう。高度な演奏力で比較的シンプルなロックを奏でていくスタイルは、とても大人な感じがします、