montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

トーキング・ヘッズ リメイン・イン・ライト (2014―9)

f:id:montana_sf16:20230221173055j:image f:id:montana_sf16:20230221174411j:image🎦Talking Heads 👺 Remain in Light (Full Album Remastered) + Vidéos - YouTube

問題作でした。音楽評論家の今野雄二氏は、この作品を「原子と原始との巨大なスパーク」と評されていました。突き詰めると意味がわかりにくいのですが、初めて聞いた時には、ここで聴かれる音楽をよく表しているなぁと思ったものです。リーダーのデヴィッド・バーンが語るところによると、「このレコードはスタジオ・ワークとアフリカ人のリズムと感性に対する共通の関心とから産み出されたもの」です。その言葉通り、本作品はこれまでの作品とは方法論からして全く異なっています。サウンドは、バンドとブライアン・イーノインプロビゼーションを行ったものですが、ジャムとかソロではなくて、「的確であると認められたパート」を切り取って、「曲の間中繰り返」しています。そして全ての曲がワン・コードでできています。アフリカっぽいです。これにバーンとイーノが音を足しつつ編曲し、最後にボーカル・アレンジが形成されていったとのことです。通常のバンドのりとは随分違うことが分かると思います。サンプリングとテクノの手法を先取りしているとも言えます。斬新でした。繰り返されるパターンは、ミニマル音楽的だとも言えますが、直接的にアフリカンな感じになっています。細かく刻むリズムが延々と繰り返されるわけで、そこに乗っかるボーカル・アレンジもアフリカのチャントのようです。ワールド・ミュージックへの視線がいいです。これが全編にわたって貫かれているわけですから、問題作であることが分かって頂けるでしょう。わが国でも賛否両論沸き起こりました。中村とうよう氏は絶賛していましたが、渋谷陽一氏は苦言を呈していました。有名な論争でした。

f:id:montana_sf16:20230221180632j:image f:id:montana_sf16:20230221174946j:image f:id:montana_sf16:20230221181429j:image f:id:montana_sf16:20230221180621j:image f:id:montana_sf16:20230221175018j:image 
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渋谷氏の論旨は、白人ミュージシャンが黒人音楽のスタイルを借りながら自分たちのスタイルを四苦八苦して築いてきたのに対し、ヘッズは安易に黒人ミュージシャンを加えてファンキーにバンドを改造していてけしからんというものでした。渋谷さんの言うことももっともだなと最初は思いました。しかし、彼らは確かにライブでは黒人ミュージシャンを加えていましたが、この作品は多少のゲストは参加しているものの、基本的にメンバーだけで作っているので、ちょっと違うような気がします。いずれにせよ、何かと話題のアルバムでした。当時、アフリカの音楽などへの関心が高まっていた時で、こちらにも少し心構えができていましたから、ヘッズ流のアフリカン・ポリリズムは適度に斬新で、個人的には大いに愛聴したものでした。こんな実験的な作風なのに、「ワンス・イン・ア・ライフタイム」なんていう、中年に訪れるミッドライフ・クライシスを歌ったシリアスながら脱力の歌があったりするのも楽しい限りでした。それにイーノ先生が連れてきたと思われるジョン・ハッセルのトランペットも素敵でした。80年代の幕開けに発表された刺激に満ちたサウンドでしたけれども、ヘッズとイーノのコラボレーションの到達点がここにあるということで、バンドはこの方向を推し進めるのではなく、方向転換していくことになります。ともかく一つの頂点を極めた作品でした。