montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ストラヴィンスキー ミュージック・フォー・チェンバー・アンド・ジャズ・アンサンブル (2014―5)

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💿️Stravinsky Conducts Music for Chamber and Jazz Ensembles - YouTube

なにやら「ストラヴィンスキーとジャズについて800字以内でまとめよ」という宿題を出されたような気分です。音大やら楽団で音楽を学んでいる人ならば、さぞや深い分析ができることでしょう。この作品はストラヴィンスキーさん自身が指揮をしたものです。室内楽アンサンブルのために書かれた曲とジャズ・コンボのために書かれた曲が並んで収録されています。演奏はコロンビア・チェンバー・アンサンブルとコロンビア・ジャズ・コンボです。最近、ポスト・クラシカルなる言葉があるようです。新しい感覚のクラシック音楽で、ポピュラーな音楽活動も行っている音楽教育を受けたアーティストが書くクラシック音楽という意味にでも解すればよさそうです。この作品でのストラヴィンスキーの音楽はポスト・クラシカルな感じがします。聴いていて、強烈に同時代感を感じました。もちろんストラヴィンスキーはネオ・クラシカルの人ですけれど、そこでいうクラシカルとポストでいうクラシカルは意味合いが違います。ここに収録されている楽曲の中には、スイスの指揮者アンセルメアメリカから持ち帰ったラグタイム・ミュージックに触発された「11の楽器のためのラグタイム」ですとか、ビッグ・バンドの一つウディ・ハーマン・バンドの演奏に感銘を受けて、ウディに捧げられた「エボニー・コンチェルト」など、ポピュラー音楽に影響された曲が入っています。そのことがポスト・クラシカル的な同時代性を感じるよすがになっているのだと思います。曲の長さも長くて三楽章14分程度といかにもポピュラー音楽っぽいです。ストラヴィンスキー先生の楽しそうな様子が目に見えるようです。しかし~続⤵️

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しかし、それでいて、実にネオ・クラシカル、新古典派的なストイックな表情は消えていません。甘くない。それに、たとえジャズ・コンボが演奏していても、まるでジャズじゃありません。ジャズのスウィング感などは皆無です。クラリネットベニー・グッドマンですけど。さらに、もう一つジャズ・コンボが演奏している「タンゴ」という曲がありますが、これなどまるでロシア民謡のようです。ギターはバラライカのようだと解説にありますが、どこがタンゴやねん、と思わず関西弁で突っ込みたくなります。ポピュラー音楽の影響を受けてはいるのですけど、それが音に直接現れているわけでもなく、かといって全然関係ないわけではない。そこはかとないフレイバーがネオ・クラシカルをポスト・クラシカルにしているという たいそう興味深い作品です。室内楽の方も、そこはかとなくポスト・クラシカルな風情です。「パストラーレ」は師匠リムスキー・コルサコフ師に捧げられた可愛らしい小品で、あまりストラヴィンスキー先生らしくありません。ただ、何だかほっとします。それにしてもこのジャケットはないでしょう。シリアスな超大作を指揮している雰囲気です。これに騙されてはいけません。とても楽しくて現代的な作品です。これぞ掘り出し物と言えるでしょう。

Stravinsky Conducts Music for Chamber and Jazz Ensembles / Igor Stravinsky (1971 Columbia)