デビューからわずか2年半だというのに、ピーター君の成長には目を見張らされます。この年頃の子供は本当に成長が早い。児童性愛を感じさせると米国ではジャケットを変えさせられたデビュー作から比べれば圧倒的に少年らしくなりました。同じようにU2のサウンドにも驚かされました。「ニュー・イヤーズ・デイ」を初めて聴いた時の驚きは忘れません。ちょうど同じ時期を並走していたエコー&ザ・バニーメンの「ザ・カッター」と並ぶ衝撃でした。奇しくも、あちらにもバイオリン、U2のこのアルバムにもバイオリン。「ニュー・イヤーズ・デイ」は、シンプルなピアノのリフとベース・ラインが印象的な傑作です。雪原を走るPVの鮮烈な印象とともにU2の人気を決定づけました。シングル・カットされて英国では初めてのトップ10ヒットになりました。U2は「オクトーバー」の後もツアーに出ます。気合の入ったライブを通して、彼らの人気はじわじわと広がっていきます。ブルース・スプリングスティーンやピート・タウンゼントなどの大物ミュージシャンからの絶賛も拍車を掛けます。この三作目のプロデュースには、クリス・トーマスやロバート・プラント、そしてピート・タウンゼントが名乗りを上げたそうです。
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一方、U2は前2作同様スティーヴ・リリーホワイトにこだわり、主義に反すると渋るスティーヴを何とか担ぎ出しました。ただし、「レフュジー」という曲だけはアイルランドのプロデューサー、ビル・ウィーランが担当しています。悪くはないと思いますが、バンドは物足りなかったのでしょう。U2は徹底的にプロデューサーにこだわるバンドです。「ウォー」と題された本作は、U2の代表曲の一つ「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」から始まります。アイルランド紛争の歴史的事件、1972年の血の日曜日を正面から歌った曲です。政治的な姿勢を鮮明にした曲はこれまた鮮烈でした。「ニュー・イヤーズ・デイ」もポーランド民主化運動の「連帯」に捧げた歌です。60年代ならいざ知らず、この当時、ロック・ミュージシャンがこうした政治的な呼びかけを行うことはカッコいいことではありませんでしたが、U2はそこを正面突破してしまいました。この2曲によって、U2の人気は不動のものとなり、アルバムは初の全英1位を獲得します。前作での迷いが嘘のように力強く自信に満ちた情熱的なアルバムです。武骨なまでにまっすぐな真摯な姿勢はアナクロのようでいて実は時代に求められていたのでした。一方、音楽的にはゲスト・ミュージシャンの参加も含めてさまざまな試みがなされています。同じアイランドに所属していたキッド・クレオールと活動していたザ・ココナッツのコーラスなんていう驚きもありました。ボノのねっとりボーカルと絡んでカワイイです。ジ・エッジがリード・ボーカルをとる曲もあるなど音楽的な実験のために、ライブで演奏されない曲もありますが、そこもU2の若さの発露です。そうした若さがまぶしい第一期U2はここに完成したと言ってよいでしょう。今でも人気の高い初期U2の傑作です。
War / U2 (1983 Island)