💿️Cactus - One Way... Or Another (1971) - YouTube
カクタスとはサボテンのことです。となるとどうしてもメキシコ系のサウンドを期待してしまいますが、このバンドにはメキシカンな雰囲気は皆無です。むしろ、「重戦車の如き怒涛のリズム・セクションにヘヴィ・ギターの応酬」が光るアメリカン・ハード・ロックの典型です。カクタスを紹介する際には必ず語らなければならない話があります。それは、このバンドは本来ジェフ・ベック・グループになるはずだったということです。ドラムのカーマイン・アピスとベースのティム・ボガートは、ハード・ロックの源流とも言えるヴァニラ・ファッジの元メンバー。この二人のリズムに惚れ込んだジェフ・ベックがバンド結成を持ち掛け、二人もその気になったにも係わらず、ベックが交通事故で入院したためにバンド構想がとん挫してしまったという経緯です。ちなみに、1972年になってベック・ボガート&アピスが誕生します。ともかく、バンドが宙ぶらりんになったことで、アピスとボガートは新たにメンバー探しにかかり、ギタリストのジム・マッカーティとその友達のボーカリスト、ラスティ・デイを迎えて、このカクタスが結成されました。カクタスは1970年にレコード・デビュー、これは翌年の二作目です。原題が訳しにくかったからでしょう、「セカンド・アルバム」と邦題をつけられたアルバムです。デビュー作はそこそこのヒットとなりましたが、この作品はようやくトップ100に入る程度でした。しかし、その後はトップ100を逃しますから、カクタスの中では売れたほうです。そうなんです。~続⤵️
💿️Cactus - Long Tall Sally (live in Memphis '71) - YouTube
このバンドは商業的にはさっぱりでしたが、アメリカン・ハードロック・シーンに輝く渋いバンドなんです。「アメリカのレッド・ツェッペリン」とも形容されるハード&ヘヴィなロックを展開するバンドで、メキシカンではなくむしろブリティッシュなサウンドです。アルバムはシングル・カットもされた「のっぽのサリー」で始まります。リトル・リチャードのクラシックですけども、なかなかそれと分からないヘビーなアレンジがなされています。重戦車と言いたくなる気持ちもよく分かります。注目されるのは逆にレッド・ツェッペリンにも影響を与えたアピス&ボガートのリズム・セクションです。ヴァニラ・ファッジの頃から定評のある二人ですけど、ここではその実力を遺憾なく発揮して、土性骨の座った堅牢な骨組みを形成しています。しかし、それにも増して、この骨組みを得て、縦横無尽に駆け回るジム・マッカーティのギターが素晴らしいです。ディストーションを利かせたり、サイケデリックを交えたりと、音色も豊ですし、キャッチーなリフが流れていく様は申し分ないです。ブルースをベースとしてはいるものの、泥にまみれる手前で花を咲かせていて、アメリカのハード・ロック・シーンに特異な光を放っています。同世代のやたらとやかましいグランド・ファンクのアメリカンな雰囲気とはまるで違います。当初の構想通り、ロッド・スチュワートとジェフ・ベックを加えていたとしたら、まるでサウンドは異なったことでしょう。ここはアメリカンなジム・マッカーティが正解でした。カクタスがいなければアメリカのシーンは寂しかったことでしょう。
One Way... Or Another / Cactus (1971 Atco)