montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

イ・プー ミラノの映像 (2012―11)

f:id:montana_sf16:20230912123950j:image f:id:montana_sf16:20230912124003j:image💿️Pooh - Alessandra 1972 (Album Completo) - YouTube

イ・プーはPFMと並んで、「イタリアにプログレあり!」と日本に知らしめたバンドです。この作品は「ミラノの映像」と邦題をつけられて、本国での発表から遅れること2年、1974年に日本で発売されたのでした。思えば、当時の自分に実に鮮烈な印象を残してくれたのでした。イタリア・ロック界の重鎮イ・プーは1966年に結成されており、1970年に大手CBSと契約してから大成功を収めることになります。ただし、彼らはメンバーの入れ替わりが激しく、CBSでの2枚目となる本作品ではついにオリジナル・メンバーは一人もいなくなってしまいました。しかし、ここから2016年まで活躍するわけですから世の中分からないものです。イ・プーはデビュー50年で区切りをつけるまで、イタリアの国民的バンドとしてスタジアム級の活動をつづけたのでした。日本にやって来た最後は2012年のことです。素晴らしい話です。さて、本作品のイ・プーは、曲の大半を書いているキーボードのロビー・ファッキネッティ、ギターのドディ・バッターリア、絶世の美男子と言われたベースのリッカルド・フォッリ、新加入のドラマー、ステーファノ・ドラーツィオの四人組です。全員がボーカルもとります。しかし、本作品で間違いなく一番目立っているのは、RAIミラノ交響楽団です。ロックのレコードには珍しく44人編成の大オーケストラが全編にわたって大活躍しています。聴き終えて振り返ると、ギターやドラムスが入っていたのかどうか判然としないほどです。

f:id:montana_sf16:20230912131327j:image f:id:montana_sf16:20230912131338j:image🎦Pooh - Alessandra - YouTube

🎦Pooh - Nascerò con te (1972) - YouTube

オーケストラに加えて目立っているのは、仕事で訪れたロンドンでムーグ博士から譲り受けたというミニ・ムーグのサウンドです。壮大なオーケストレーションとムーグ・シンセサイザーの絡み合いは素晴らしいの一言です。実験精神が横溢しています。ここでイ・プーが紡いでいるのは、華麗にして壮大なオーケストラを背景にして、叙情的で美しいメロディーを甘い歌声で歌い上げるというどこまでもヨーロピアンなアルバムです。イタリアの街並みが映像として浮かんでくるようで、まるで映画音楽のようにも思えます。一方、イ・プーの持ち味はその歌謡曲的ともいえるポップさでした。全面的にオーケストラを導入していますから、当時の私には十分プログレでしたけれども、奥深いイタリアン・プログレ界ではプログレとみなされないことも多いので界隈の方と話す時は要注意です。さて、本作品は全編イタリア語ですから、当時の本邦発売元だったCBSソニーは邦題をつけ放題です。たとえば「ミラノの映像」の原題の「アレッサンドラ」、ロビーの娘さんの名前と全く関係ありません。この命名は日本での受容のされ方上手く表現して秀逸です。しかし、ラジオから流れてきて以来、自分の頭の中から消えない奇跡の名曲「愛のルネッサンス」の原題を直訳すると「僕たちはこの世でもあの世でも二人」です。正しい訳は「三途の川を渡っても」となりますかね。本当に美しい曲ですから、まあいいんですけど..。全編イタリア語の歌詞を対訳で読んでみますと、何ともイタリアらしく、ほとんど全曲が愛の歌であることが分かります。しかも、何といいますか、そのほとんどでフィジカルな愛を歌っています。ひたすら美しいサウンドは愛の営みの賜物なのでした。

Alessandra / I Pooh (1972 CBS)