montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

スティーリー・ダン キャント・バイ・ア・スリル (2019―5)

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f:id:montana_sf16:20221213122331j:image💿️Steely Dan - Can't Buy a Thrill (Full Album) ᴴᴰ - YouTube

スティーリー・ダンと言えばハイセンスな職人ユニットのイメージがありますけど、このデビュー・アルバムの頃はそうではありませんでした。むしろ自分は正直、ちょっと鈍くさい感じさえするアメリカのロック・バンド群の一つというイメージをもっていました。ジャケットのけばけばしい感じ、バローズの「裸のランチ」に出てくる「蒸気式張り型」からとったといういかにもなバンド名、そして何よりも6人の集合写真の何とも言えないあか抜けない感じ。とりわけ、ジェフ・スカンク・バクスターウォルター・ベッカーの風貌。スティーリー・ダンウォルター・ベッカードナルド・フェイゲンの二人のソングライティング・チームがプロデューサーのゲイリー・カッツと知り合い、彼がハウス・プロデューサーを務めるABCレコードとレコーディング契約を締結してデビューしました。もともとソングライターとしての契約だったものが半年しか続かず、アーティスト契約となったということです。この当時の通念に従って、ロックならバンド、バンドならツアーだということでレコード会社は迷いがありません。二人も新人でしたし、抗うことはできませんでした。というような事情は随分後で知りました。当時のライナーノーツなどは普通に6人組のバンドだと紹介していましたし、そこに疑いをはさむ余地もありませんでしたから。後の作品「彩(エイジャ)←名盤」や「ガウチョ」から遡って初めて得心がいくお話です。いずれにせよ、二人はレコーディングのためのアーティストを呼び寄せつつ、バンドとしての体裁を整えていきます。

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f:id:montana_sf16:20221213140331j:image f:id:montana_sf16:20221213140354j:image🎦Steely Dan - Do it again (with lyrics) Restored video - YouTube

裏話としては、ヒットした「リーリン・イン・ジ・イヤーズ」でソロ・ギターを弾いている大物スタジオ・ミュージシャン、エリオット・ランドールには加入を断られています。さらに、ラウドン・ウェインライト三世やリック・デリンジャーニルス・ロフグレンにも断られたそうです。また、ボーカルのデヴィッド・パーマーは、フェイゲンが人前で歌いたくないことから呼ばれたんだとか。といろいろありますが、要するに最初から二人のユニットだったんです。このアルバムはリアル・タイムで本当によく聴いていたので今でも全曲覚えています。しかし、バンドとして聴いていた当時と、フェイゲン・ベッカーのユニットによる作品として聴いている今とは、同じサウンドながら別のアルバムのような気がしてきますから不思議なものです。このアルバムの全10曲はそれぞれが1曲ずつ実に丁寧に作られています。というようなことはバンドとして聴いていた時よりも、二人組作品として聴き始めてからの方がしみじみと身に染みてきます。そもそもメンバー以外の方が活躍していたりしますし。デビュー曲にしてトップ10ヒットとなった「ドゥ・イット・アゲイン」は、軽快なラテンのリズムに乗せて、執拗に同じメロディーを反復する名曲です。印象的なソロはエレクトリック・シタールによるもので、デニー・ダイアスのギター・サウンドに飽き足らなかった結果用意されました。これを筆頭に、それぞれの曲に二人の工夫が凝らされています。しかし、デヴィッド・パーマーの甘いボーカルが映える「ダーティー・ワーク」から「キングス」、「ミッドナイト・クルーザー」への流れなどは後の彼らからすればちょっとダサい感じで、でもそこがとても愛おしいです。

Can't Buy A Thrill / Steely Dan (1972 ABC)