montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

オーティス・クレイ 愛なき世界で (2015―6)

f:id:montana_sf16:20240107214945j:image f:id:montana_sf16:20240107214956j:image💿️Otis Clay - Trying to Live My Life Without You - YouTube

まずジャケットがいいです。この色使い、タイポグラフィー、デザイン、家具、オーティス・クレイの佇まい、マルチーズ、何から何までもう典型的なソウル・アルバムです。まるで音が響いてくるかのようなジャケットです。1970年代のソウルを代表するジャケットの一つでしょう。本作品はメンフィス・サウンドの中でスタックス・レコードと並び称されるハイ・レコードから発表されたオーティス・クレイの初めてのアルバムです。「オーティス・クレイの最高傑作にして、サザン・ソウル史上屈指の名盤である」とレーベル側は自信たっぷりです。クレイの音楽人生は1946年、クレイ4歳の時に始まっています。クレイ一家はゴスペル・グループを結成してミシシッピなど米国南部を巡業して回っており、クレイは4歳にしてそのメンバーとなって人前で歌い始めました。これぞ音楽一家です。これが10年続きます。その後、シカゴに出たクレイはゴールデン・ジュビレアズを始めとするさまざまなゴスペル・グループでシンガーとして活躍した後、1965年にR&Bソロ・シンガーとしてワンダフル・レコードとの契約を得て、さまざまなヒット曲をとばすようになりました。この時のヒット曲「ザッツ・ハウ・イット・イズ」は再録音されて本作品にも収められています。ワンダフルの経営が行き詰まると、クレイはやむなくアトランティック傘下のコティリオンに移籍し、ここでもちょっとしたヒットを記録します。そうしていよいよウィリー・ミッチェルとハイ・レコードの登場と相成ります。

f:id:montana_sf16:20240108123217j:image f:id:montana_sf16:20240108101322j:image f:id:montana_sf16:20240108123741j:image f:id:montana_sf16:20240108122839j:image 
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これまでのキャリアをすべて注ぎ込んだというべきデビュー・アルバムがこうして誕生しました。しかし、四半世紀にわたる長い道のりだったとは言え、クレイはようやく30歳になったばかりです。アルバムはハイからの3枚目のシングルにして自身最大のヒットとなった「愛なき世界で」で始まります。のちにOVライトもカバーするサザン・ソウルの名曲ですが、むしろボブ・シーガーのロック・バージョンの方が有名かもしれません。これがアルバム・タイトルにもなりました。また、ヒットはしなかったものの2枚目のシングルとなった「プレシャス・プレシャス」も含まれています。この曲は前年にジャッキー・ムーアがヒットさせていますけども、日本では、ヒットしなかったクレイ・バージョンの方がずっと人気です。クレイの日本での人気はなかなかのものです。この作品も発表の翌年にはキング・レコードから日本盤が発売されていますし、1978年には初来日を果たしています。土性骨の座った武骨なボーカル・スタイルは確かに日本向きです。メンフィス・ホーンズの粘っこいサウンド、ハイ・レコードのリズム・セクション「ハイ・リズム」のごつごつしたリズム、メンフィス・ストリングスの柔らかいサウンドがクレイの歌声とあいまって、ハードなR&Bもねっとりしたバラードも息遣いが生々しく響きます。決してお洒落なサウンドではありませんし、大ヒットするようなアルバムでもないのですが、腸の底の方にある琴線をときおり弾いてくれる、とても愛おしいサウンドです。サザン・ソウル、メンフィス・サウンドの底力を示すアルバムだと思います。

Trying To Live My Life Without You / Otis Clay (1972 Hi)