💿️昭和生まれの人なら覚えているかも知れませんが、その昔、森永チョコボールの金のラベルが出ると「オモチャの缶詰め」が貰えるというのがありました。(←今でもあるんかな？🙄) それとあと、コカ・コーラを買うとLPレコードが当たるというキャンペーンもありました。当然ながら自分たちにとってLPは高価なものでしたから、色めき立ったものです。そして、なな、なんと！、友だちが見事に当選したんです。その結果、それほど多くないラインアップの中から選んだのがこの作品でした。本人曰くイエスのことを全然知らなかったのにジャケットで選んでしまったようで、大変後悔した様子でした。そこで、私の出番です。ま~、要するに500円で引き受けた。というワケです。なんつってもイエスはプログレですから、普段、普通のロックを聴いている人にとっては大そう難解に感じる作品でしょう。閑話休題。この作品はしばしばイエスの最高傑作と言われます。特に日本ではそう言われることが多いです。一つの理由は邦題ではないかと思います。必ずしも直訳ではありませんけど、これほど的確にアルバムの内容を言い当てた言葉はないのではないでしょうか。ロジャー・ディーンの手になる緑のグラデーションを使ったシンプルなジャケットに、「危機」という邦題。そしてサウンドは攻撃的で緊張感が高いときてます。イエスと言えばアンサンブルですが、ジャケットとタイトルとサウンドのアンサンブルも絶妙でした。
🎦YesSongs #5: YES - Close To The Edge - YouTube
楽曲は表題曲がA面全部を占めていて、B面には2曲だけですから、全部でわずかに3曲です。イエスの表現欲求は一曲3分では到底収まらないということです。しかし、組曲形式になっていますから、さまざまなアイデアを統合していくのが好きなんでしょうね。しばしば話題になるのはジョン・アンダーソンの描き出す歌詞の世界です。英国よりも大陸で受けそうな難解極まりない歌詞で、自分にはよく理解出来ませんでした。詩人として高く評価されているとはあまり聞きませんけれど言葉の並べ方はなかなか美しいと思います。表題曲は邦題の示す通り、迫りくる危機の中で鬼気迫る演奏を聴かせます。四つのパートに分かれていますが、それぞれが独立しているわけではなく、メロディーや歌詞は繰り返し使われています。強烈なビートを伴う激しい演奏です。B面に行くと、一転して穏やかな「同士」と、当時のコンサートではオープニングを飾っていた「シベリアン・カートゥル」という二つの曲が並んでいます。どうしてもA面に注意が行ってしまいますが、自分はどちらかと言えばこちらの曲の方が好きです。ちょっと力が抜けています。サウンドの処理の仕方もあるのでしょうが、全体に各楽器の音が角ばっています。ぶきぶきした演奏になっているところにどうしても注意が向いてしまいます。つまり変拍子が強調される録音の仕方です。ところがｺﾚ、ライブになるとまろやかになるんですよﾈ。ステージで何度も繰り返し演奏することで円熟味が増していくという、そんなバンドがイエスです。普通、プログレの人たちはステージでの完璧な再現はできませんけど、彼らは出来る。ま、おそらく基本はライブの人たちなんでしょうね。こんな大作であるにも関わらず、英米ではトップ5に入る大ヒットを記録し、日本でもかなり売れました。当時、プログレ人気が凄まじかったことが分かって頂けるのではないでしょうか。今となっては不思議な思いにかられてしまいます。
Close to the Edge / Yes (1972 Atlantic)
