一皮むけたような可愛らしいジャケットです。この上ないシンプルなデザイン、飄々とした表情からは水墨画を思い起こしてしまうのですがいかがでしょう。初来日公演の大成功でぐっと日本への印象を良くしたTOTOからのプレゼントのようにも思います。TOTOの3枚目のアルバム「ターン・バック」です。この作品はクイーンのエンジニアとして知られるジェフ・ワークマンをプロデュースに迎えて制作されました。その背景には、TOTOがクイーンのようなアリーナ・ロックを志向したことがあるようです。たとえばオールマン・ブラザーズ・バンドのようなバンドはライヴが本業で、スタジオでのアルバム制作はその延長上にあるわけですが、TOTOはもともとスタジオで生きてきた人たちなので、いわばスタジオ・ワークが本業です。その彼らがアルバム制作からプロモーション・ツアーを繰り返すうちに、ライヴの楽しさに目覚め、そちら方面でより力を発揮しようとしたと考えたとしてもおかしくありません。そこでアリーナ級のライブとはどんなものか知り尽くしているジェフを召喚したと考えたいです。ライヴとなると一番張り切るのはギタリストです。ここでもその例にもれず、ギターのスティーヴ・ルカサーが大活躍しています。キーボードが二人いるバンドとは思えないくらい、ルカサーのギターが鳴り響いています。アリーナにはやっぱりギターです。
🎦Toto - Goodbye Elenore - YouTube
この当時の新しいギター・ヒーローと言えば、なんといってもエディー・ヴァン・ヘイレンです。三大ギタリスト以来、低迷していたギター・ヒーロー界に彗星のごとく現れ、瞬く間にギター・キッズの心をつかんだのがエディーでした。本作品でのスティーヴ・ルカサーはどうやらエディーに対抗しているのではないかという世評が根強いです。その力はあるルカサーですから、ステージを何度も経験して、自分だってヒーローになりたいと思ったとしても全くおかしくありません。そんなわけで、本作品はギターばりばりでTOTOのハード・ロック・アルバムとして知られることになりました。TOTOはTOTOなのですが、前二作とはかなりテイストが異なるアルバムになっており、ハード・ロック好きな人にはたまらない作品です。しかし、シングル・カットされた「グッバイ・エレノア」はやはりギターの活躍が目立つ曲ですが、トップ100にも入りませんでした。ところが、この曲は日本ではそこそこヒットしました。アルバムも米国ではゴールドディスクにもなりませんでしたが、日本では結構売れました。ルカサーの曲「リヴ・フォー・トゥデイ」や「ターン・バック」などの力強い曲とともにバラード風の曲がしっかり組み合わさっているところもアリーナ・ロック的ですし、日本で受ける要素も満載で、TOTO人気はここ日本でいやましに高まっていきます。AOR、プログレ、ハード・ロックと移り変わってきたTOTOですが、アルバムの売上は順調に下がってきました。達者な彼らのことですから、売れ線を続けるのはさして難しいことではなかったでしょうが、あえて挑戦する姿勢は立派です。それが次につながったのでしょう。
Turn Back / TOTO (1981 Columbia)