👆これこれ、このジャケットです。ロジャー・ディーンのイラスト・ジャケットこそがイエスの象徴です。あ、イヤ、プログレッシブ・ロックと言えばロジャー・ディーンとまで言えるかもしれません。プログレと聞いてまず思い浮かべるのがロジャーのイラストなんですよネー🤔
💿️Fragile (Yes album) - YouTube
これまでのアルバムに画竜点睛を欠いていた感じがしてしまうのは、ロジャー・ディーン不在だったからなんです。ロジャーはロンドンの有名なジャズ・スポットのロニー・スコットの内装に係わったことからジャケット制作を始めました。イエスはそんな彼の傑作でしょう。また、イエスはこの作品からキーボードがトニー・ケイからリック・ウェイクマンに交代しました。攻撃的なハモンド・オルガンにこだわったトニーに対し、ウェイクマンは変幻自在、クラシックの素養が深いことに加え、シンセやメロトロンにも貪欲でした。ベクトルとしてはギタリストのスティーヴ・ハウへの交代と同じですね。ロックやジャズへのこだわりではなく、音そのものへの探求心が旺盛で、それを実現するだけの力量を備えた度量の広い奏者が揃いました。ま、ぶっちゃけ "もん"個人的にもこの辺りからが「yes」であり、結果として出来たアルバムは前作以上の大成功を収め、英米でトップ10に入るヒットとなっています。しかも、「ラウンドアバウト」はシングルでもあわやベスト10入りするかという大ヒットです。大輪を咲かせることになった出世作です。
アルバムにはメンバー5人それぞれのソロ楽曲とアンサンブル重視のバンド曲がうまく配置されています。それぞれのソロは、まずウェイクマンの「キャンズ・アンド・ブラームス」。キーボードの多重録音によるブラームスの交響曲です。いかにもリックらしいです。ジョン・アンダーソンはボーカルの多重録音で「天国への架け橋」、ビル・ブラッフォードは手数の多いドラムを中心としたバンド演奏曲「無益の5%」、クリス・スクワイアは変拍子の「フィッシュ」、スティーヴ・ハウは前作同様アコギのソロで「ムード・フォア・ア・デイ」です。EL&Pの「ワークス」やキッスのメンバー・ソロとは違って、それぞれの持ち時間が短いところがいいです。つまり控え目な姿勢が好感度大です。やはりイエスはアンサンブルが命であることをメンバー全員がよくわきまえているということでしょうね。代表曲となる「ラウンドアバウト」が冒頭におかれて、もう一曲の代表曲「燃える朝焼け」が最後に来ます。両曲でサンドイッチするように各自のソロといくばくかのバンド作があるという見事な構成です。決して散漫なスタイルではありません。タイトルは「フラジャイル」で、まさに「こわれもの」ですけれども、フラジャイルな感性というにはあまりにマッチョなんです。微妙な陰影を愛でるというよりも、豪快にアンサンブル・サウンドが展開します。バンドの状態はフラジャイルだったそうですが、音は全然違います。充実の作品で、商業的にも大成功していますし、非の打ち所がないです。ですが、あえて申し上げると、個人的にはライブの方が好きです。こんな緻密なサウンドなのに、ライブでのこなれた演奏に軍配が上がるところがイエスのイエスたる所以です。
Fragile / Yes (1971 Atlantic)