montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

サム・クック ハーレム・スクエア・クラブ 1963 (2012―3)

f:id:montana_sf16:20231210193713j:image f:id:montana_sf16:20231210193720j:image💿️One Night Stand - Sam Cooke Live At The Harlem Square Club, 1963 - YouTube

マイアミにあるハーレム・スクエア・クラブで行われたサム・クックのライヴを収録したアルバムです。ライヴが行われたのは1963年1月12日の夜です。録音されているからには発表する予定だったのでしょうが、実際に陽の目を見たのは1985年6月のことです。当時クックが所属していたRCAレコードは、ここでのクックのエネルギッシュなステージがRCAが売り出しているクックのイメージに合わないと判断して、この作品をお蔵入りにしてしまっていたとのことです。首脳陣もぶっ飛んだのはぶっ飛んだんでしょう。RCAが名作「ナイトビート」の次に発表したのが、ポール・アンカニール・セダカとの「3グレイト・ガイズ」というアルバムだったことを考えると、お蔵入りにした判断も納得できます。ポピュラー界を代表する二人と並ぶ人にしては破天荒に過ぎるわけです。ピーター・バラカン氏によれば、サム・クックレイ・チャールズジェイムズ・ブラウンと並ぶ巨人で、1950年代のR&Bの世界にゴスペルの要素を持ち込んで、1960年代ソウル・ミュージックの基礎を築いた偉大なアーティストです。異論はありません。しかし、ここ日本では他の巨人たちに比べると知名度が劣ると言わざるを得ません。それはひとえにRCAの米国白人向けのイメージ戦略のせいだと思われます。もしも、当時このアルバムが発表されていれば、様相はまるで変わっていたかもしれません。このライヴは1か月に及ぶクックのツアーの一部として行われたものです。~続⤵️

f:id:montana_sf16:20231211101627j:image f:id:montana_sf16:20231211101656j:image f:id:montana_sf16:20231211101721j:image 
f:id:montana_sf16:20231211101753j:image f:id:montana_sf16:20231211101729j:image🎦SAM COOKE - Bring It On Home To Me (Live at Harlem Square Club, 1963) - YouTube

バックを務めるのはサックス奏者キング・カーティスのバンドで、いつものクックのバンドからギターのクリフトン・ホワイトとドラムのアルバート・ガードナーが合流しています。カーティスは後にアレサ・フランクリンなどとの共演で人気を博しますが、この頃はまだ20代の若さです。サックス2本にギターも2本、ドラム、ベース、ピアノの7人構成で荒々しくもご機嫌な演奏を聴かせてくれます。クックも大変気持ちよさそうです。ハーレム・スクエア・クラブはマイアミの黒人街にある小さなクラブで、集まった聴衆はゴスペル時代からクックを応援しているような黒人ファンばかりです。ここではクックはポール・アンカ的なイメージなど全く無用とばかりにリミッターを解除して初っ端からパワー全開です。RCAに残した作品とは一味違う、ごつごつした声で力強くシャウトするクックが聴かれます。そして、魅力的な声による独特のこぶしは誰にもまねできない素晴らしさです。観客との掛け合いも盛り上がり、失神者が出てもおかしくない熱狂のステージです。このアルバムは20年後にテープが発見されて陽の目を見ると瞬く間にライヴ・アルバムの傑作として評価され、史上最高のアルバム○○選などが企画されると必ずといっていいほど上位にランクされています。ソウルのアルバムの最高峰の一つになっているわけです。クックはこのライヴから2年足らずで33年間の短い生涯を終えてしまいます。それを思うとこのライヴが発見されていなかったとしたら、私たちはクックの凄さを本当には理解できていなかったのかもしれません。ともかくも発表されたことに感謝するしかありません。

One Night Stand! Live At The Harlem Square Club, 1963 / Sam Cooke (1985)

参照文献:「魂のゆくえ」ピーター・バラカン(ARTES)