montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

アル・クーパー 赤心の歌 (2018―10)

f:id:montana_sf16:20240205124920j:image💿️Al Kooper - Naked Songs (1972) - YouTube

アル・クーパーの正体を一言で言うのは困難です。そもそもプロとしてのキャリアは十代半ばで加入したロイヤル・ティーンズに始まります。タモリ倶楽部のオープニング曲として有名な「ショート・ショーツ」のあのバンドです。レコーディングには参加していませんが。その後は、ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」での演奏、ブルース・プロジェクト、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズでの活躍、マイク・ブルームフィールドとのスーパー・セッション、ジミ・ヘンドリックスの「エレクトリック・レディ・ランド」への参加。はたまたローリング・ストーンズの「レット・イット・ブリード」にも顔を出し、レイナード・スキナードをプロデュースしてヒットさせてもいます。1970年前後のアメリカン・ロック史における極めて重要な人物であることが分かります。一方で、ソロ・アーティストとしても活動しており、本作「赤心の歌」は6枚目となるソロ・アルバムです。これまで挙げた経歴が凄すぎて、黒幕としての存在感が強く、ソロ・アルバムが霞んでしまっています。ボーカリストとしての力量に疑問符が付けられてしまいました。しかし、このアルバムを筆頭に日本では極めて人気が高いです。例えば渋谷陽一氏は「何故か私は彼のことが異常に好きで」、「ひょっとすると私とアル・クーパーは前世でつながりがあったのかもしれない」とまで言っています。

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f:id:montana_sf16:20240205125625j:image🎦Al Kooper - Jolie (HD) Ft. Keira Knightley - YouTube

解説の渡辺亨氏も「このアル・クーパーの『赤心の歌』は、自分が年齢を重ねるにしたがって、より素晴らしく思える数少ないアルバムのひとつだ」と書いていて、熱のこもった調子でクーパーへの想いを綴っています。特に三曲目の「ジョリー」は氏も含めて人気が高い。他にもネットを見ると、多くの方が日本語で本作あるいはアル・クーパーのことを綴っていることが分かります。発表当時は日本の音楽誌で酷評されていたとの話もありますから、じわじわと聴き継がれてきたのかとも思います。日本人の琴線に触れるサウンドなのでしょう。アル・クーパーは多才な人ですから、本作品でも各楽曲がさまざまにアレンジされています。それぞれがかなり異なる調子です。「時の流れるごとく」ではブルース臭の濃いギター・ソロが堪能できますし、「ジョリー」はストリングスが光ります。弾き語りもあればロックもある。しかし、「赤心の歌」、「ネイキッド・ソングス」のタイトル通り、赤裸々に自分自身をさらけ出している点で一貫しています。そもそも一曲目のタイトルが「自分自身でありなさい」です。これを旨としてアルバムを制作したことがありありと分かります。黒っぽいオルガンを始め、アル・クーパーの演奏はさすがですし、仲間たちのまとめ方も極めて上手い。肝心のボーカルについては、あまり高く評価されていませんけど、そこがまた日本人に受けるところでしょう。黒すぎるとついていけないですから。その事績ばかりが注目されてしまいますから、重要人物はつらい。しかし、シンガー・ソングライターとしてのアル・クーパーはこうして極東の国日本では決して忘れられていません。日本のお家芸、紙ジャケでの再発も果たし、ますますその地位を不動にしています。

Naked Songs / Al Kooper (1973 Columbia)

参照:「ロック・ベスト・アルバム・セレクション」渋谷陽一新潮文庫