三作ぶりに草薙剣が帰ってきました。ちゃんと輪っかも登場し、7本の剣があしらわれました。TOTOは剣をジャケットにもってくるときは傑作が誕生するというジンクスでもあるのでしょう。この作品もその例にもれず、TOTO史上に残る名作とされています。一見すると前作からメンバーは変わっていないように見えますけれども、オリジナル・メンバーだったポーカロ兄弟の一人スティーヴが脱退してしまいました。彼の脱退の理由は本格的に作曲をキャリアとして追求したいということだったとかいろいろ説があります。しかし、そこは兄弟ですから、はいさようならとはならず、本作品にはスティーヴ・ポーカロが全面的にかかわっています。いわばスタジオ・ミュージシャンとしての関りです。このことがメンバーに原点回帰を促したのかもしれません。全体にリラックスしたサウンドになっています。恒例のゲストですが、まずイエスのジョン・アンダーソンが目を引きます。シングル・カットされた「ストップ・ラビング・ユー」でコーラスに参加しています。リードはジョセフ・ウィリアムスですが、サビの部分で一瞬アンダーソンにとって代わられてしまいます。「ステイ・アウェイ」に同じくコーラスで参加しているのはミス・アメリカ、リンダ・ロンシュタットです。彼女が歌うサビのフレーズはやはりジョセフを圧倒しています。こうした大ボーカリストとの共演は少し酷ではあるでしょう。ジョンとリンダ・バージョンで聴きたくなりますから。なお、「ステイ・アウェイ」には化けものデヴィッド・リンドレーがラップ・スティール・ギターで参加しており、こちらはいいアクセントとしてTOTOの演奏陣とがっちりと組み合った演奏を聴かせています。~続⤵️
🎦Toto - Stop Loving You - YouTube
こういうゲストの使い方はいいですね。本作品からは「パメラ」のトップ40ヒットが生まれました。アルバム冒頭を飾るこの曲はジョセフがリードをとる初めてのヒット曲です。落ち着いたAOR調の楽曲で、アダルト・コンテンポラリー・チャートではトップ10入りしています。この曲はある意味で本作品全体の色彩を決定しているようです。前作よりもさらに落ち着いたAOR色が強くなっています。それもジャズ寄りではなくて、しっかりとポップでソリッドなロックでありながら、まろやか風味を少し加えたような調子です。プロデュースはTOTOに加えて、音響技術者のジョージ・マッセンバーグ、そしてリトル・フィートのビル・ペインです。外部のプロデューサーを取り込んだ決断は功を奏しています。アルバムとしてのタイトなまとまりが前二作に比べて格段に増しています。しかし、本作品はシングルヒットを生んだにも係わらず、アルバム全体としては前作よりもぱっとせず、米国ではゴールド・ディスクも逃しています。ところが、ここ日本ではオリコンで3位となる大ヒットとなりました。日本人の琴線にふれるポイントが多い作品なんです。あいかわらず高い演奏能力で引き締まった80年代ロックの王道演奏を繰り広げるTOTOです。何か新しい発見があるわけではありません。その意味では安心できる作品です。いつもよりも少しだけ充実している、その喜びを噛みしめるアルバムです。
The Seventh One / TOTO (1988 Columbia)