montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ティラノザウルス・レックス ティラノザウルス・レックス登場 (2011―8)

f:id:montana_sf16:20230929165541j:image💿️My People Were Fair and Had Sky in Their Hair... But Now They're Content to Wear Stars on Their Brows - YouTube

イギリスはファンタジーの国です。シェークスピアの「真夏の夜の夢」に始まり、スウィフトの「ガリバー旅行記」などを経て、トールキンの「指輪物語」、CSルイスの「ナルニア国物語」といった傑作を生んで、ローリングの「ハリー・ポッター」に至ります。このティラノザウルス・レックスのデビュー・アルバムはアスランナルニアの住人に捧げられています。また、マーク・ボランとデュオを組む相棒はスティーブ・ペレグリン・トゥックを名乗っています。「指輪物語」のホビット仲間の一人ピピンの本名です。マーク・ボランが作り出す歌詞の世界もファンタジーそのもので、このバンドは何から何まで徹底的にファンタジーです。さらに言えば、マーク・ボランの存在そのものがファンタジーです。妖精というと少し違いますが、現実感がとても希薄な人です。「自分はスターになるのだ」と確信を持っていたマーク・ボランは、ティラノザウルス・レックスを6人組のロック・バンドとしてスタートさせました。しかし、借り物の楽器を撤収される憂き目にあってしまい、あえなくその構想はとん挫してしまいました。次にボランが企画したのは、盗んできたボンゴを叩くスティーヴ・トゥックとのアコースティック・デュオです。二人は、ロックン・ロールへの愛と、ファンタジー趣味がばっちり合ったようで、このデュオの活動は軌道に乗っていきます。アコースティック・ギターとパーカッションだけのデュオというのはとても珍しいのですが、シタールとタブラであれば全く珍しくありません。実際、ボランはラヴィ・シャンカールのステージを見て感じ入り、こういう形の音楽をやるようになったということです。

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f:id:montana_sf16:20230929165907j:image f:id:montana_sf16:20230929165952j:image f:id:montana_sf16:20230929165924j:image💿️Child Star (Mono Version) - YouTube

1968年当時ですから、まだフラワー・ムーヴメントの余韻はあったのでしょうが、それでも彼らは十分に異彩を放っていました。普通のロック・バンド形式よりもずっとシーンに合っていたようです。彼らはロンドンのアンダーグラウンド・シーンでは知れた顔となります。そして、彼らとともに成長する名プロデューサーで、当時はまだ若かったトニー・ヴィスコンティに見いだされてレコード・デビューします。この作品が彼らのデビュー・アルバムです。まだ駆け出しのジョン・ピールが朗読で参加している他は二人だけで制作されています。全体に中近東風と言うか、無国籍なボンゴが鳴り渡ります。決してうまいわけではありませんけども、とても奇妙な味わいがあります。そんなリズムに乗せて、マーク・ボランが誰にもまねできないチリチリ声で歌います。これがもう素晴らしいわけです。ボランの歌声と不思議な二人の演奏は、この世から遊離した世界を描き出します。「チャイルド・スター」や「ヴァージニアの城」などを聴いていると、こちら側の世界に生きていることが無性に悲しくなり、気がつけばそちら側の美しい世界に抱かれている自分がいます。最高~。マーク・ボランはご存じのとおり、しばらく後には70年代最初のスーパースターとなるわけですが、その原点にはこんな世界があったんです。しかし、よ-く聴くと彼の本質は後々も変わりません。自分たちの年代の本物のヒーローの一人です。

My People Were Fair And Had Sky In Their Hair... But Now They're Content To Wear Stars On Their Brows / Tyrannosaurus Rex (1968 Regal Zonophone)