montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

R.E.M. オートマチック・フォー・ザ・ピープル (2017-5)

f:id:montana_sf16:20220830082657j:image🎦R.E.M. – Automatic For The People [1992] - YouTube

「オートマチック・フォー・ザ・ピープル」は前作「アウト・オブ・タイム」同様、1800万枚を売り上げるいわゆるダイアモンド・ディスクとなりました。この売り上げを続けるのは並大抵のことではありませんが、それをREMが成し遂げたことに驚きます。本作品は前作とは打って変わってぐっと落ち着いた作品になりました。前作が爆発的なヒットになったからといって、メンバーは「誰一人大きな家や車を買うようなことはなく、ただリハーサルとレコーディングに戻っていったんだ」とちゃんと正気を保っていました。そのうえ、ツアーには出ないと宣言していたことから、ライブで再現することを考えなくてもよくなり、さまざまな制約から自由になりました。80年代のロック・バンド・スタイルと訣別し、今回は「座ってアコースティックを演奏する」ということになりました。何とまっとうな人たちでしょう。その結果出来上がった作品は浮かれたところなど微塵もなく、重厚なフォーク・ロック・サウンドが終始展開します。これほど統一感のあるアルバムも珍しく、高い評価を受けるとともに英米を始め各国で大ヒットしたのも当然です。たとえば、発表当時のイギリスでは、「ドライブ」がシングル・カットされた1992年10月から、「エヴリバディ・ハーツ」がカットされた1993年4月からしばらくの間、すなわち約半年にわたってREMの曲を聴かない日はないほどの愛されぶりでした。

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f:id:montana_sf16:20231018094509j:image🎦R.E.M. - Everybody Hurts (Official HD Music Video) - YouTube

ストリングス・アレンジメントは元レッド・ツェッペリンジョン・ポール・ジョーンズが手がけています。名曲「エヴリバディ・ハーツ」を含む4曲だけですが、決して大仰にならずにアルバムの重厚な空気感を増幅する心憎いアレンジです。これもライブを考えないからこそできる自由な雰囲気の表れです。アルバムは、メンバーが楽器を持ち替えたり、偶然のミスタッチを取り上げたりと自由な実験を繰り返しながら制作されていきました。幽霊が憑いていると力説する家での録音とか。歌詞はずいぶん聴き取りやすくはなりましたが、歌詞カードはもちろんついていませんし、相変わらず分かりにくい。今回のテーマは死であるようです。「トライ・ノット・トゥ・ブリーズ」や「スウィートネス・フォローズ」などがそれを代表しています。重厚になるはずです。アルバムの中で最もヒットしたのは「エヴリバディ・ハーツ」ですが、彼らの代表曲ともいえる「マン・オン・ザ・ムーン」も忘れてはいけません。コメディアンのアンディー・カウフマンへのオマージュとなると同時に、月面着陸陰謀説にふれたサビが印象的な名曲です。マイケル・スタイプニルヴァーナカート・コバーンが歌詞に♪イエー♪を多用することに対抗してカート以上に♪イエー♪を使うことにこの曲でチャレンジしたと語っています。カートは死の直前にこのアルバムを聴いていたとか。当時のシーンを物語るお話しでした。そんな逸話があるからというわけではありませんが、このアルバムを聴いているとしみじみとして涙がでます。実験を重ねつつも行き着いた先は飾り気のない、真正面からサウンドに取り組んだREMの傑作です。浮ついたところのない重厚な作品はやはり強いです。

Automatic For The People / R.E.M. (1992 Warner Bros.)