💿️Deep Purple - Come Taste The Band (1975) (35th Anniversary Edition) - YouTube
どうしてバンド名を変えなかったんでしょうか。このアルバムの評論や感想文の大半は、このアルバムがディープ・パープルの名にふさわしいかどうかを語ることに費やされていると言っても過言ではありません。発表当時は酷評が多かったと記憶していますが、今は、パープルらしくないけれども、これはこれでなかなか良いアルバムだという後ろめたさに彩られた論調が多いです。バンド名が違っていたら、こんな煩わしいことはなかったでしょうに。しかし、バンド名が違っていたらここまで売れたかどうかは分かりませんから、まあセールス的にはパープルを名乗ったのは正解だったのかもしれません。ちなみに、この中から三人が参加したホワイトスネイクは最初苦戦しています。この作品では、ギターがリッチー・ブラックモアからトミー・ボーリンに交代しました。パープル・サウンドそのものだったリッチーの交代ですから、これまでとはインパクトが違いました。一旦は解散する話も出ていたようですが、マネジメント・サイドは続行を求めます。そして白羽の矢が立ったのが、アメリカ人トミー・ボーリンでした。イーグルスのジョー・ウォルシュがいたバンドに後釜で入った人ですから、パープル路線とは随分違う出自です。事実、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」しか知らなかったそうです。そんな彼がギターを弾きまくっているこのアルバムは、前作よりもよりストレートなハード・ロック・アルバムになっています。
🎦Deep Purple - Come Taste the Band (Tour 1975-1976) extended version - YouTube
ただし、ヘビメタ的な様式美の世界というよりも、アメリカンなテイストです。そこがパープル・ファンのツボにははまらなかったところでしょう。リッチー・ブラックモアという人は、熱狂的な信者を集めたギタリストです。宗教のようでした。マネジメントはそこを読み違えたのではないでしょうか。リッチーの交代はこれは許せないと考えるファンが多かった。特にここ日本ではそうでした。リッチーよりも明るくて派手なギターを弾くトミーさんは、こうしたファンの視線に傷つくことも多かったようです。もともとドラッグに手を出していた彼は、どんどん深みにはまり、ライブで演奏できないことも多々ありました。ついでにベースのグレンも本来はボーカリストなのに、リードでなかったことを不満に思ってドラッグに手を出していたということです。こうしてバンドは蝕まれていきました。結局、この第四期ディープ・パープルはほどなく解散してしまいました。このあたりもバンド名を変えていれば避けられたかもしれないと思うと複雑です。名前と言うものは重いものですね。相撲の四股名や歌舞伎の名跡など伝統芸能の世界に通じるものをこのロック界にも感じます。デヴィッドのソウルフルな歌声に、派手めなトミーのギター、そして控えめながら存在を主張しているジョンのキーボードが、ドライブする素敵なロック・アルバムなんですが、何とも複雑な思いです。
Come Taste the Band / Deep Purple (1975 Purple)