montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

デヴィッド・トーン、ミック・カーン、テリー・ボジオ ポリタウン (2022―1)

f:id:montana_sf16:20231227145532j:image💿️David Torn, Mick Karn, Terry Bozzio - Polytown - YouTube

「テクスチャー・ギタリスト」と呼ばれるデヴィッド・トーン、元ジャパンの超絶ベーシスト、ミック・カーン、ドラム小僧テリー・ボジオの三人によるアルバムです。三人の接点がどこにあったのか今一つ定かではありませんが、絶妙なトリオができたものです。三人が対等の立場でクレジットされていますけども、その時の事情に応じてリーダー扱いされる人が異なるという、これもまた面白いアルバムです。当初日本盤はテリー、再発盤ではミックに光があたっていますが、海外ではデヴィッドをリーダーとすることが多いようです。個性的なドイツのレーベルであるCMPから発表された本作品「ポリタウン」は1993年6月から7月の3週間で制作されています。この間に曲作りから録音までこなすという超特急プロジェクトでした。時間的制約が良い刺激になったとミックは述懐しています。しかし、プロジェクト自体は1989年から三人で話をしていたそうですから、トリオの頭には音像がかなり出来上がっていたものと思います。それがあったからこそ、三週間で一気に絞り出すことができたのでしょう。制作の妙味であろうと思います。実は、デヴィッドは1992年に聴神経腫瘍の手術を受けており、その後も不調が続いていたそうです。このアルバムを制作した時期も不調は続いており、その体調不良を押しての制作となりました。時間の短さはそれとも関係あるのでしょう。それにしてもミュージシャンが聴神経に係わる病気をするとは悲劇です。

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f:id:montana_sf16:20231227151025j:image f:id:montana_sf16:20231227150948j:image🎦Terry Bozzio ,David Torn & Mick Karn - Honey Sweating & Palms For Lester New York '94 - YouTube

一時期は右耳が聴こえなかったそうですが、それでもステージをこなしていたといいますから、凄い。後に術後の不調を克服していっそうの大活躍を続けるのですから、これまたマジ凄い。アルバムはゲストを交えず三人だけで制作されています。作曲もプロデュースも三人の連名ですし、使用されている多彩な楽器群も三人が演奏しています。濃密な三週間を過ごした三人です。それはそれは満足のいく作品に仕上がったことでしょう。通常、ドラム、ベース、ギターのトリオとなれば、ドラムとベースがリズムを刻んで、ギターがソロを弾きまくる形が真っ先に思い浮かびますけども、この作品はまるで異なります。かといって典型的なジャズ・トリオというわけでもありません。うねうねとのたくるミックのベースがリード楽器的なのはいつものことですが、ここではテリーのドラムもリズムをキープするというよりも、一打ち一打ちが饒舌で、まるでリード楽器のようです。音響がまた素晴らしく、ぱっつんぱっつんのサウンドが耳を刺します。デヴィッドのギターはテクスチャー・ギターと呼ばれることになるだけのことはあり、華麗なソロを弾くのではなく、アンビエント的なサウンドで音のテクスチャーを決めていきます。ECM系のギタリストに感じが近いといえば伝わるでしょうか。ジャズともロックとも何とも分類不能な音楽です。三人の鬼才は、いずれ劣らぬジャンル横断アーティストですから当然といえば当然ですが、レーベルとしては売りづらいことでしょうネー。ともあれ、全編インストゥルメンタルサウンドはまことに奇妙で美しいです。

Polytown / David Torn, Mick Karn, Terry Bozzio (1994 CMP)