ノエル・ギャラガーは、アルバム発表直後に来日公演を行っています。チケットは即日完売、追加公演も行われるなど、オアシス以来相変わらず日本でも人気が高いです。アルバムもトップ10に入りました。前作から3年半ぶりに発表されたセカンド・アルバムです。今回は、ノエル初のセルフ・プロデュース作品ということで気合が入っています。今作は「かつてないほど多種多様なサウンド」を取り入れた作品だというのが制作サイドの発表です。次は実験的な作品になる、と前作発表時に予告されていましたから、それを意識したのでしょう。「ウエストコーストロックからクラシックロック、果ては『スペース・ジャズ』といったそれぞれ全く異なる要素を取り込んだ」とされています。ノエル本人も、『何だこれ?アイツぶっ飛んでるぞ』って思わせる曲があると嬉しそうに語っています。ノエルは比較的こういうことを言わない人ですから、相当野心的な作品であると考えていることが分かります。しかし、ここまで引っ張っておいてから、CDをかけてみると、いきなりオアシスの名曲「ワンダーウォール」を思わせるイントロで始まります。「リバーマン」です。構えて聴いてみましたが、ここでまずはほっとします。いつものノエルです。ただし、「リバーマン」には、本人の予告通り、確かにサックスのソロが入ります。「ジャズ」です。それでは「スペース」はどこにあるかというと、これはメロトロンのサウンドではないかと思います。これが「スペース・ジャズ」の正体ではないでしょうか。
🎦Noel Gallagher’s High Flying Birds - While The Song Remains The Same (Lyric Video) - YouTube
これまでのノエル作品との最大の違いは、メロトロンの大活躍です。前から使っていましたが、今回はノエルと主力メンバーのポール・ステイシーにメロトロンのクレジットがあります。彼のサウンドを特徴づけるウォール・オブ・サウンドをギターではなくメロトロンが担っています。最初のシングル曲となった2曲目以降も、充実したキャッチーなメロディーの曲が並んでいます。どの曲もしっかりしたメロディー・ラインのノエル節が炸裂しています。この人は何でこんなにいい曲が書けるんでしょう。心底、感心いたします。確かに、制作サイドの言う通り、いつもよりはバラエティー豊かです。テクノ・デュオのアモルファス・アンドロギュノスが共同プロデュースを務めた2曲はとりわけ変わっています。「ライト・スタッフ」のサウンドの広がり、クラプトンの「コカイン」を思わせる「ザ・メキシカン」。2曲目のシングル「バラード・オブ・マイティー・アイ」にはザ・スミスのジョニー・マーがギターで参加しています。それに前作とは違って、ギター他でポール・ステイシーが全面的に参加しています。それも音の表情に彩りを添えています。しかし、いろいろと言ってはみても、振れ幅は「ぶっ飛んでいる」ほどは大きくありません。安心して聴けるノエル・ギャラガーの作品がまた一つ増えたという嬉しい事実が積み重なりました。今回も一緒に歌いながら聴けるカッコいい作品です。ホント毎年出してほしいです。