montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ビリー・ホリデイ 奇妙な果実 (2015-3)

f:id:montana_sf16:20220410212448j:image🎦Billie Holiday : The Commodore Records - YouTube

2015年4月7日はビリー・ホリデイが生まれてからちょうど100年目に当たります。もう100年かと思う反面、わずか100年かとも思います。少なくとも自分の祖父母よりは若いですし、彼女が活躍していた時期は両親の青春時代です。ジャズ・クラシックス中のクラシックです。「これらの演奏が含まれていないジャズ・コレクションはまことに貧相なものだ」とはジャズ評論家のグレン・クルトの言葉です。それほど定番中の定番です。ビリー・ホリデイ自身がジャズ・ジャイアントですけども、彼女のカタログの中でもコモドア・レーベルに残した録音の数々は彼女の最高傑作として知られています。何と言っても代表曲「奇妙な果実」が含まれていますから。確かにこの曲は凄いです。詩人ルイス・アレンの詩にビリーとピアノのソニー・ホワイトが3週間を費やして曲をつけました。その詩は、リンチに遭った黒人が木に吊るされている情景を描いたものですが、妙に静かな情景描写だけからなっています。それが返って凄味を増しています。糾弾するでもなく、泣き叫ぶでもない。深い悲しみと絶望を通り越した心情が、強い陽射しに磔になったような情景に埋め込まれています。それをビリー・ホリデイが、人種差別故に亡くなった自身の父親の想い出を重ねて歌います。「エレジーではない。告発のドキュメントでもない。不用意に聴くと怪我をする」絶唱です。遊び半分のクラブ客に初めてこの歌を披露した時、「歌い終わっても、一つの拍手さえ起らなかった。そのうち一人の人が気の狂ったような拍手をはじめた」。後は推して知るべしです。

f:id:montana_sf16:20220717213246j:image f:id:montana_sf16:20220717213310j:image f:id:montana_sf16:20220717213325j:image 
f:id:montana_sf16:20220717213345j:image f:id:montana_sf16:20220717213413j:image f:id:montana_sf16:20240407095207j:image🎦Billie Holiday - "Strange Fruit" Live 1959 [Reelin' In The Years Archives] - YouTube

💿️Billie Holiday - "i´ll be seeing you" - YouTube

「奇妙な果実」は1939年の録音です。当時、ビリーはそれまでのカウント・ベイシー楽団などの楽団専属歌手から独立したばかりです。そこにこの曲の大ヒットが生まれます。大手レコード会社は録音を拒否したために弱小コモドア・レーベルへの吹き込みです。結局、この曲は彼女の最大のベストセラーになります。この作品は、コモドア・レーベルに残したセッションの記録です。1939年4月、1944年3月と4月です。当時はLP時代ではありませんからディスコグラフィーも複雑ですが、これはマスター・テイク盤で全16曲収録です。「奇妙な果実」以外の曲も素晴らしいです。なんていうこともないスタンダード曲も彼女のねっとりとした歌唱によって凄い曲に生まれ変わっています。その比類ない歌唱力は思わず正座して聴いてしまう迫力です。SP盤に残された録音はとても良いです。これはもちろんCDなのですが、近年のクリアな録音よりもビリー本人の息遣いが感じられるように思います。控えめなバックの演奏も程よい音量でビリーの歌声が際立ちます。壮絶な人生を生きたビリー・ホリデイです。神が彼女に与えたもうた試練の数々は常人の想像をはるかに上回るものですが、それもこの歌唱を作り出すためだったのかと思うと、まるでキリストのような人です。人々の苦難を一手に引き受けて、それを歌に変える。凄いです。。😔

Billie Holiday / Billie Holiday (1946 Commodore)

参照:「ジャズCDの名盤」悠雅