大人になったマイケル・ジャクソンの初めてのソロ・アルバムです。モータウンを飛び出してエピックに移籍したことで、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えることが可能となり、ポップス史に残る名盤が誕生しました。後に世界のスーパースターであることが属性となったマイケルですが、この頃はまだソウル界のスーパースターにすぎませんでした。ジャクソン5の末っ子であったことから、日本ではフィンガー5のアキラと比べられたりする微笑ましいスーパースターぶりでした。この時、マイケルは弱冠20歳の若者でした。しかし、ジャクソン5でデビューしたのは10歳くらいですから、すでに芸歴10年のベテランであり、それまでに「ベンのテーマ」で全米1位も経験済みという人気者ぶりです。可愛かったですね。マイケルはダイアナ・ロスとミュージカル映画「ウィズ」で共演しており、その音楽監督を務めたのがクインシー・ジョーンズでした。本作品はその縁でクインシーがプロデュースすることになった模様です。クインシーはマイケルの才能にほれ込んだようです。さすが。アルバムは先行発売されたシングル「今夜はドント・ストップ」で始まります。この曲はすっきりと全米1位となった名曲です。イントロを聴くだけで、このアルバムが1980年代サウンドを形作ったことが分かります。マイケル自身の作詞作曲能力の高さも証明しました。
🎦Michael Jackson - Don’t Stop 'Til You Get Enough (Official Video) - YouTube
🎦Michael Jackson - Rock With You (Official Video) - YouTube
そして続けてマイケルの代表曲の一つ「ロック・ウィズ・ユー」が出てきます。この曲も全米1位です。このゆったりとしたダンサブルな名曲はロッド・テンパートンがマイケルのために作った曲です。ロッドはヒートウェイブなるディスコ・バンドをやっていた人です。さして有名でもなかったロッドに白羽の矢をたてたクインシーはやはりただ者ではありません。ロッドは本作品に3曲を提供しており、タイトル曲「オフ・ザ・ウォール」もシングル・カットされ全米10位のヒットとなっています。見立て通りの活躍をしたわけです。ソングライターは他にもポール・マッカートニーにスティーヴィー・ワンダーという超大物が名を連ねています。こうした超豪華な幕の内弁当スタイルはマイケルとクインシーならではです。曲調もずいぶん違いますが、マイケルが圧倒的な実力で自分のものにしています。その中でも興味深いのはこれまた全米10位のヒットとなった「シーズ・アウト・オブ・マイ・ライフ」です。クインシーが3年くらい持って回っていた切々としたラブ・バラードで、マイケルはこれを歌うたびに最後のところで泣いていたそうで、そう言われればそう聴こえます。演奏陣も当然豪華です。ブラザーズ・ジョンソンのルイス・ジョンソンとルーファスのジョン・ロビンソンのタイトなリズム隊を中心に、ラリー・カールトンやデヴィッド・フォスター、ジェフ・ポーカロなどが参加しています。クインシーの作り出すサウンドは時代そのものです。本作品は結局2000万枚以上を売り上げるモンスター・ヒットになりましたが、「スリラー」以降とは次元が異なり、まだまだソウル好きの間で虚心坦懐に愛でられていました。このアルバムをマイケルの最高傑作だという人も多いほのぼのとした名作です。
Off The Wall / Michael Jackson (1979 Epic)