montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ポール&リンダ・マッカート ニー ラム (2016―2)

f:id:montana_sf16:20230618162612j:image💿️25- Paul McCartney- RAM (Full Album) - YouTube

ポール・マッカートニーの妻リンダに対する想いの深さは良く知られるところですが、意外なことに二人の名義のアルバムはこの作品「ラム」だけです。まあ、二人はウィングスの中心メンバーですし、自分自身何に驚いているのか自分でも分かりませんが。ソロ・デビューとなった前作から約1年、スコットランドのキンタイア岬の農場に引っ込んだマッカートニー夫妻が作り上げた、「これは世界が今とは異なっていた、昔々のアルバム」です。「僕の歴史の一部」だとポールは愛おしそうに語っています。さらに続きます。「それは僕がヒッピーとして過ごした日々、そしてその制作における自由な姿勢を思い起こさせます。みなさんに気に入ってもらえるよう祈っています、僕は気に入ってますから」。アルバムの性格をこの上なく的確に表現しています。ローファイ宅録の前作とは異なり、この作品はニューヨークやロサンゼルスのスタジオで録音されており、全面的とはいえませんが、ゲスト・ミュージシャンも参加していますし、ニューヨーク・フィルによる演奏もフィーチャーされています。とはいえ、英語版ウィキペディアが本作品を「インディー・ロック」に分類しているように、前作の風合いを残しています。フィル・スペクターにプロデュースを委ねたジョン・レノンジョージ・ハリソンを引き合いにだして、セルフ・プロデュースの失敗とする意見も見受けられます。しかし、あえて手作り感を残したのはポールの戦略でしょうし、それは見事に成功していると思います。

f:id:montana_sf16:20230618165556j:image f:id:montana_sf16:20230618165616j:image  f:id:montana_sf16:20230618165643j:image f:id:montana_sf16:20230618165700j:image f:id:montana_sf16:20230618165713j:image f:id:montana_sf16:20230618165726j:image🎦Paul McCartney - Too Many People - YouTube

🎦Paul & Linda McCartney - Uncle Albert / Admiral Halsey [High Quality] - YouTube

1971年のアルバムなのに、とても現代的に響きます。ポップなだけに見落とされがちですが、ポールのサウンドに対する姿勢は抜きんでています。この作品にゲスト参加しているのはまずはデヴィッド・スピノザとヒュー・マクラッケンという二人のギタリストです。二人とも大物セッション・マンですけど、この当時はまだ駆け出しです。さすがはポール、目が確かです。そしてドラムのデニー・シーウェル、彼はこの後ウィングスに参加して、しばらくポールを支えることになります。ウィングスに参加するのはリンダも同じです。彼女はこの作品ではポールとデュエットしたり、バッキング・コーラスをつけたりとしっかり足跡を残しています。とはいえリンダの活躍はそんなものではありません。このアルバム全体を覆う平和で幸せな空気はリンダのおかげでしょう。こんな空気の作品なのに、発表当時、ジョン・レノンとの確執などのビートルズがらみのゴシップにまみれてしまいました。残念なことです。それも今は昔。ポールのブンチャブンチャいうお気に入りのリズムや「ヘイ・ジュード」的なメロディーの癖が随所に表れた、ハッピーで意欲的な作品はほのぼのした光を放っています。政治の季節にこうした牧歌的な作品を発表するところにポールの真骨頂があります。なお、本作品は発表当時からヒットしてはいます。英国では1位、米国でも2位ながらロング・セラーですし、「アンクル・アルバート~ハルセイ提督」の全米1位ヒットも生みました。ジョンやジョージに比べて少し軽んじられがちですが、ポールはポール、やはり凄いです。

Ram / Paul and Linda McCartney (1971 Apple)