montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

スティクス コーナーストーン (2015―9)

f:id:montana_sf16:20231019074539j:image💿️Cornerstone - YouTube

スティクスの9枚目のアルバム「コーナーストーン」からはいよいよ全米1位を獲得したシングル・ヒットが誕生しました。「ベイブ」がその曲です。「コーナーストーン」はその「ベイブ」が入ったアルバムだと覚えている人がほとんどではないかと思います。ありがちな話ですが、この「ベイブ」はヒットを狙った曲ではありませんでした。デニス・デヤングが奥さんの誕生日にプレゼントした曲です。当初はデヤングのキーボードとパノッツォ兄弟のリズム・セクションだけのデモ・トラックに過ぎなかったということです。それをスティクスのポップ・マイスター、トミー・ショウが聴いて気に入り、ギター・ソロをダビングして完成させて、ようやくアルバムに収録する運びとなったそうです。アルバムに入れるつもりすらなかった曲がシングル・カットされて全米1位に輝く。面白いものです。それにしても「ベイブ」は名曲です。そもそもメロディーが美しいですし、歌詞もべたべたなラヴ・ソングだけに時代を越えています。曲の構成も見事で、1970年代を代表するラヴ・ソングの一つに違いありません。日本でも繰り返しCMに使われ、その都度プチ・ヒットしています。本作品には「ベイブ」の他にもヨーロッパで大人気となったショウの「ボート・オン・ザ・リバー」という人気曲も収録されています。マンドリンアコーディオンを使った無国籍風サウンドは歌謡曲的でもあり、英米以外の国の人の琴線に触れるサウンドです。こうしたヒット曲に恵まれた「コーナーストーン」は、それまでのスティクス・サウンドに比べると、ずいぶんとポップに寄せてきました。プログレ・ハードの旗手だったスティクスですけれども、プログレ要素もハード要素もやや後退して、見事なポップ・アルバムとなりました。

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f:id:montana_sf16:20231019090432j:image f:id:montana_sf16:20231019090811j:image🎦Styx - Babe (Official Video) - YouTube

この転換の背後には英国ツアーへの酷評があったのだそうです。米国ではプログレと呼ばれていたスティクスは確かにプログレを意識していましたが、プログレはおらが国の音楽だと思っている英国ではそうした態度は受け入れられませんでした。「大いなる幻影」や「ピーシズ・オブ・エイト」と立て続けにトリプル・プラチナ・アルバムを連発したスティクスですが、実際、英国ではさっぱり人気がありませんでした。方向修正を図ったこのアルバムでようやく英国市場にも参入することができるようになったのでした。発表は1979年のことです。英国のプログレッシブ・ロックもパンク/ニュー・ウェイブに翻弄されてしまっており、全体にポップ化が進行していた時期でもありました。少し後のエイジアに代表される動きです。その意味ではこのスティクスも時代にシンクロしています。本作品もデヤング、ショウにジェームズ・ヤングの三人が作曲とボーカルを分け合っており、スティクスの体制は盤石にみえます。ただし、ヤングの曲は一曲しか収録されておらず、やや不穏な空気が流れ始めました。ポップ化はデヤングの指向でもありました。本作品はスティクスとして初めて全米2位とトップ5入りして見事にトリプル・プラチナ・ステータスを獲得し、グラミー賞にも初めてノミネートされました。長年苦楽を共にしたエンジニアのバリー・ムラーツから離れて制作したポップな作品は商業的には大成功でした。

Cornerstone / Styx (1979 A&M)