montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

ドリーム・シアター シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス (2020―4)

f:id:montana_sf16:20230506194152j:image💿️Six Degrees of Inner Turbulence - YouTube

やりました。ドリーム・シアター、6作目にして初めての2枚組超大作です。これまで何度も2枚組を企図したにも関わらず、諸般の事情から毎回1枚にまとめさせられていた彼らがようやく思い通り2枚組を完成させました。それにしては全部で90分強と短いですが。アルバムは「シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス」と題されました。前作に引き続いてセルフ・プロデュースによるコンセプト・アルバムです。特にタイトル曲はディスク2全体を占める一大組曲になっています。ディスク1は5曲目の「ディスアピア」を除く4曲が10分程度の長尺の曲で占められており、アルコール中毒や不信心、孤独、生と死の尊厳などの人生の苦悩をテーマにしています。実際、この頃、マーク・ポートノイはアルコール依存症治療をしていたそうです。ディスク2の組曲は8つのパートに分かれており、さまざまな精神疾患に苦しむ6人の物語が展開しています。とりわけ、双極性障害、PTSD、統合失調症産後うつ自閉症、解離が表されていると説明されています。そしてタイトルの「シックス・ディグリーズ」は、友達の友達を六回たどれば全世界の人々につながるという「六次の隔たり」を意識しているとのことです。めまいがするほどのザ・プログレぶりが凄いです。真の髄までプログレを体現しているバンドといえるでしょう。

f:id:montana_sf16:20230507135816j:image f:id:montana_sf16:20230507135516j:image f:id:montana_sf16:20230507135858j:image f:id:montana_sf16:20230507135458j:image 
f:id:montana_sf16:20230507134933j:image🎦Dream Theater - The Glass Prison (live) - YouTube

深刻なコンセプトにもかかわらず、メンバーが分担して書いている歌詞はとても分かりやすく難解からは程遠いです。しかし、ジェームズ・ラブリエのボーカルはあくまで美しく、バカテクの演奏もいつも通りスピード感に満ちており、一言でいえば爽快です。冒頭の「グラス・プリズン」などは、メタリカを思わせる深刻度で始まるのですけど、結局、深刻なコンセプトとは裏腹に、いつものドリーム・シアターを大いに楽しむことができます。英語ネイティブでないからかもしれませんが、どうしても爽やかが勝つ。やはり彼らの魅力は徹底的に音楽的なスタイルにあることが再確認できます。タイトル曲にはここではクラシック、フォーク、ジャズ、メタルの影響が表れているとされています。幅広い音楽の引出を一挙に放出したアルバムであるということです。公式サイトはアルバムに影響を与えた作品を列挙しています。メタリカ「メタル・マスター」、レディオヘッド「OKコンピューター」、パンテラ「俗悪」、メガデス「ラスト・イン・ピース」、U2「アクトン・ベイビー」、ツール「エニマ」、ナイン・インチ・ネイル「ダウンワード・スパイラル」。さらにリストは続き、中にはバルトークやマリア・ティーポの「ショパンノクターン」などクラシックも上がっています。タイトル曲などは壮大なオーケストレーションで多彩なスタイルを包んだ仕上がりですから、まさにこうした影響の集大成だと言えます。2枚組にこれでもかこれでもかとアイデアが詰め込まれていながら、しつこく言いますがとても爽快なアルバムです。題材とはうらはらにポジティブなエネルギーに満ちていて、2枚組になったのも必然です。あふれでる創造力がまぶしいです。

Six Degrees Of Inner Turbulence / Dream Theater (2002 Elektra)