montana_sf16’s diary

気まぐれではありますが「過去記事」を少しずつ掲載していきたいと思います。※アルバム紹介について。⇒ バンド名~アルバムタイトル~(掲載年月) ←この順番になっています。何かご覧になりたいもの等ございましたら受け付けますのでどうぞよろしくお願いいたします。🙇‍♂️

TOTO 聖なる剣 (2014-4 掲載)

f:id:montana_sf16:20230722042520j:image💿️TOTO IV (1982) - YouTube

TOTOの前作「ターン・バック」はそこそこ売れてはいますけど、彼らに大きな期待を寄せるレコード会社にとっては商業的に惨敗でした。その結果、次にヒットが出せなければ契約を打ち切るとまで言われてしまいます。そこに本作品。やる時にはやるもんです。まず、この作品「聖なる剣」は1982年度のグラミー賞を独占しました。最優秀アルバム、最優秀プロデューサー、シングル曲「ロザーナ」の最優秀レコードと主要三部門を独占した他、最優秀録音なども含めると計7部門で受賞しています。アルバムは米国では1位にこそなりませんでしたが、300万枚を超える大ヒットを記録しました。シングル・カットされた「ロザーナ」は激戦のために2位どまりでしたが、軽いエスニック風味のコーラスが素敵な「アフリカ」は見事に全米チャートを制しました。ついでに「ホールド・ユー・バック」も全米10位となっています。日本でもアルバム・チャートの3位まで上がっていますし、「ロザーナ」と「アフリカ」のMVはベストヒットUSAを中心にヘビー・ローテーションされたので、自分の脳裏に焼き付いています。何がどうしてこうなったのか。一つにはとても丁寧なプロダクションがあります。このアルバムの制作には実に9ヶ月、1000時間をかけたそうです。結果的には全10曲収録ですけど、25曲もの録音が行われました。気合の入り方が違います。時間をかけ過ぎると煮詰まりそうですが、彼らはやはりスタジオの申し子です。時間をかければかけるだけ良いものができる。工夫に工夫を重ねて作られたサウンドは1980年代のサウンドをある意味で決定づけたものになりました。ドラムを始め、各楽器の音は抜けがよいですし、全体に広がりのある音像が素晴らしい。コーラスの扱い方やシンセサイザーの使い方、ストリングスの重ね方、どこをとっても1980年代サウンドの典型です。そのオリジネーターが彼らなのでしょう。ジャケットには輪っかが4つ、その一つだけ瑕がついていません。それが四作目の本作品です。これまでとは違う自信のほどを表現したということです。

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f:id:montana_sf16:20220409210940j:image f:id:montana_sf16:20220409210959j:image🎦Toto - Rosanna (Official HD Video) - YouTube

AORからプログレハード・ロックと来た先にある本作はそれらを程よく塩梅した見事な作品です。サウンドはまことに素晴らしく、非の打ち所がありません。恥ずかしながら楽器演奏(🎸)から挫折した自分が聴いていても完璧具合が分かるというものです。テクニックもさることながら、とてもさわやかにAORでプログレでかつハードロック。何とも心憎いまでのサウンドです。ところでギネスのポピュラー音楽百科はTOTOを「そこそこのアルバムがそこそこのヒットとなったどちらかと言えば顔のないバンド」と酷評しています。完璧すぎるサウンドによるつるんつるんのサウンドだという批評でしょう。そういう意見が出るのは分からなくもないです。しばしば指摘されるのはボーカルの個性が弱いという点です。しかし、余計なお世話です。このサウンドにはこのボーカルがよく似合います。「真のTOTOサウンド」は、全てを超越」してしまい「もはや、ジャンルなどない」。TOTOすら超えてしまったようです。

🎦Toto - Africa (Official HD Video) - YouTube

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エアロスミス 闇夜のヘビィ・ロック (2017-3)

f:id:montana_sf16:20220415124520j:image💿️Toys In The Attic - YouTube

「ウォーク・ディス・ウェイ」は画期的な曲でした。ランDMCによるカバーがエアロスミス復活の契機になったことは良く知られています。しかし、そのおかげでそもそもこの曲がエアロスミスをスターダムにのし上げるきっかけとなったことが忘れられている気がします。それまで話題にはなっていたものの、どうも今一つ突き抜けられずにいたエアロスミスでしたが、この曲を含む3枚目の本作「闇夜のヘヴィ・ロック」をきっかけに押しも押されもせぬスーパースターに登りつめることとなりました。ボーカルのスティーヴン・タイラーは残念なことに唇がミック・ジャガーに似ていました。そのため、日本ではエアロスミスストーンズの真似をしているバンドと捉えられていました。欧米でもそれはありましたが、むしろサウンド的にレッド・ツェッペリンのコピーだとされました。確かに当時、米国にはこうした都会派のハード・ロック・バンドはなかったので、しょうがないことだったのかもしれません。その殻を破ったのが「ウォーク・ディス・ウェイ」だったんだろうと思います。自分もこの曲で初めてエアロスミスを好きになりました。しかし、この曲は最初にシングル・カットされた時にはチャートインすらしていません。わずか1年後に再発されてトップ10ヒットになるのですから面白い。アルバム自体もトップ10入りしていませんが、通算123週チャートインという超ロングランになっています。要するに、このアルバムがじわじわと全米に支持を広げていって、結果800万枚以上を売り上げるエアロスミスの代表作になったということです。エアロスミスの実力が人気を引き寄せたという理想的な展開です。当時のLPのコピーは「時代は変わった...さあ、主役の交代だ!」というものです。この頃からロック界の新御三家と呼ばれ始めました。

f:id:montana_sf16:20220415124721j:image f:id:montana_sf16:20220415130548j:image f:id:montana_sf16:20220415130724j:image f:id:montana_sf16:20220415130748j:image🎦Aerosmith - Walk This Way (Live From The Office Depot Center, Sunrise, FL, April 3, 2004) - YouTube

🎦Aerosmith - Sweet Emotion - YouTube

キッスとエアロスミスは定番で、もう一枠はクイーン、チープ・トリック、エンジェルなどが競っていました。新しいスターに飢えていたんです。さて、「ウォーク・ディス・ウェイ」はツェッペリンばりのギター・リフと、早口のラップのようなボーカルによる特徴的な曲でした。しかし、当時のハード・ロック・ファンの間ではむしろ「スウィート・エモーション」の方が人気が高かった。それほど異端だったんです。ところで、当時の邦題事情が面白いです。「ウォーク・ディス・ウェイ」は「お説教」、「スウィート・エモーション」に至っては「やりたい気持」です。今は引っ込められていますが、特に後者は当時のロックの捉えられ方を反映しています。まだまだロックは不良の音楽でした。ともかく、ジャケットも前2作の野暮ったい感じとは異なり、かなり垢ぬけてきました。同様にアメリカのハード・ロックと言えば、その頃はグランド・ファンク的な野暮ったさが一つの持ち味でしたが、ここでのサウンドは随分垢ぬけています。プロデューサーのジャック・ダグラスとの息もぴったり合ってきました。まだ、アルバム自体は粗削りですが、「クイーンに対するアメリカン・ヘヴィからの解答だ!」とレコード会社が息巻くだけのキラリと光る名盤です。

Toys In The Attic / Aerosmith (1975 Columbia)

ラヴィ・シャンカール アット・ザ・モンタレー・インターナショナル (2019―3)

f:id:montana_sf16:20230618083527j:image💿️Ravi Shankar - Live at The Monterey International Pop Festival (1967) FULL ALBUM - YouTube

🎦Ravi Shankar at Monterey Pop (June 1967) - YouTube

こんな時代もありました。1960年代後半のロック・フェスティバル時代に、インド古典音楽がロックと同じステージに立ったんです。時はサイケデリック全盛期でもあり、ヒッピーたちの視線がインドに向けられていた時代です。インド古典音楽の名人の一人、ラヴィ・シャンカールは1967年6月に今や伝説となっているモンタレー・インターナショナル・ポップ・ミュージック・フェスティヴァルで見事な演奏をアメリカのオーディエンスに披露しました。画期的な出来事です。シャンカールは1956年からカーネギーホールなどで演奏していましたから、アメリカは初めてではありません。当初はジャズ・ファンが主な聴衆だったそうです。しかし、1966年にジョージ・ハリソンと会ってから、サイケデリック全盛のロック界からも声がかかります。ワールド・パシフィックなるレーベルを立ち上げてシャンカルを含むアジアの音楽を発信してきたリチャード・ボックからモンタレーの話が舞い込んできました。話に乗ってモンタレーにやってきたシャンカールにとっては、当時のカリフォルニアは驚くべき経験だったようです。フェスは6月16日から18日にかけて行われました。初日、シャンカールはオーティス・レディングに感動し、ママス&パパスでいい気分になり、ジャニス・ジョプリンの才能に強い印象を受けます。

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しかし、それからが良くなかった。ジミヘンとザ・フーです。ヘンドリクスがギターを燃やし、ザ・フーが楽器を壊しまくる姿を見て、シャンカルはいたく傷つき、違約金を払ってでも翌日の演奏予定をキャンセルすることを主張しました。あんな奴らの間で演奏したくない。考えてみれば正しい反応です。ボックと主催者側の話し合いで、シャンカールは3日目の昼、直前直後に誰も演奏しないことを条件に演奏することを承諾します。皆がほっと胸をなでおろしたことでしょう。結果、シャンカールもベスト・パフォーマンスと胸をはる演奏ができました。ステージではシャンカールのシタールに、伝説の巨匠アラ・ラカのタブラ、カマラ・チャクラヴァルティーのタンブーラが加わり、トリオで演奏が行われました。全部で5曲、トータルで2時間を超す演奏でしたので、LP1枚に収めるためにここでは3曲が選ばれました。シタールとタンブーラによる午後のラーガ「ビムパラシ」、ついでザキール・フセインの父でもあるアラ・ラカのタブラ・ソロ、そしてトリオでの「ドゥン(ダドラ・アンド・ファスト・ティーンタル」。ジミヘンも含めた聴衆の雰囲気は素晴らしく、シャンカールにとっても記憶に残る演奏でした。インド古典音楽の録音は概して空気感も収録しようと引いた感じで行われるものですが、ここではそれぞれの楽器の音が際立って聴こえます。いわばロック的な響きです。さらにシャンカールはロック聴衆にも分かりやすい曲を選んでいるので、相乗効果です。ヘンドリックスやジェリー・ガルシアも加わっていた聴衆はシャンカルの音楽を西洋音楽オルタナティブとして受け入れたのでしょう。シャンカールはウッドストックにも出演して、若者のハートを捉えます。インド古典音楽恐るべし。。😓

Live At The Monterey International Pop Festival / Ravi Shankar (1967 World Pacific)

参照:ラヴィ・シャンカル・インタビュー

 

ダリル・ホール&ジョン・オーツ フロム A トゥONE (2014―7)

f:id:montana_sf16:20221010202809j:image f:id:montana_sf16:20221010202817j:image💿️DarylHall & JohnOates - Rock'n Soul /LP Album - YouTube             🎦Greatest Hits—Rock ‘n’ Soul, Part 2 (Hall & Oates) - YouTube

「ベストヒットUSA」最多出場を誇るダリル・ホール&ジョン・オーツです。「俺たちは80年代のビートルズだと思っている」とはダリル・ホールさんの発言ですが、80年代初頭の彼らの勢いはそれを大言壮語とは思わせませんでした。ダリル・ホールさんは、自分をシリアスなアーティストだと思われたがっていた節があります。稀代のヒットメーカーで、売れに売れていましたが、世間は売れるアーティストを軽く見る傾向があります。デュラン・デュランなどもそうでした。それが不満だったようです。ただ、彼らの音楽はブルー・アイド・ソウルそのものです。ソウル・ミュージックのアーティストは、もともとシリアスなアーティストとは縁遠い存在です。音楽だけでファンも満足でしたから、余計な尾ひれは必要ないというわけです。ホール&オーツの姿で一番印象に残っているのは、ライブ・エイドで彼ら憧れのテンプテーションズのメンバーとともに横一列で、みんなで糸を巻き巻きしている姿です。心の底から楽しそうで、見ているこちらまで本当に楽しくなったものです。シリアスなんて糞くらえじゃないですかネーwww😜 自分から見て彼らはライブ・エイドの姿だけで十分です。てゆーか、あれで一気に見直しました。音楽バカでいいじゃないですか。その後になって、彼らの一連のヒット曲を振り返ってみてようやくその真価が分かった気がしました。~続⤵️

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この作品は彼らのベスト・アルバムです。ほとんどがトップ10ヒットで、11位に輝いた曲も5曲あります。本当に勢いがありました。自分たちの年代の方で、洋楽を聴いていた人ならば、特にファンじゃなくてもほぼ全曲耳になじみがあると思います。彼らのサウンドはソウルそのものです。そらもー黒い黒い。それもシリアスな黒さではなくて、モータウンやフィリーやスタックスなど黒人音楽のメインストリームを一緒くたにして、さらに80年代風に味付けした感じ。つまり、どす黒くない軽い黒さなんですね。それでも、RCA移籍以前のラテン・ファンク風味の「サラ・スマイル」などは黒すぎて、当時の自分には馴染めない部分もあったのですが、「キッス・オン・マイ・リスト」からはもう怒涛の快進撃でした。出す曲出す曲大ヒットでした。当時の黒人音楽と言えば、ディスコ・ミュージックのはずなんですけど、彼らの場合はディスコという感じでもないんですよネ。当時は仕事柄、新橋~銀座辺りから近かったもので、週末ともなると日比谷のラジオシティなんかに行っていましたが、確かによくかかってはいたのかもしれませんけど、典型的なディスコ・サウンドではないんですよネー。そこが彼らのいいところです。決して計算して売れ筋を狙ってるわけではなくて、好きで好きでしょうがないソウルを解釈して演奏したらヒットしたというように思えるところがいいんですよね。80年代、というかベストヒットUSAを代表するアーティストだけに、全盛期の勢いは本当に素晴らしいです。その勢いのすべてを余すことなく収めたこのアルバムが悪かろうはずがないです。これこそ彼らの最高傑作でしょう。

Rock'n Soul Part 1 / Daryl Hall & John Oates (1983 RCA)

ビリー・ホリデイ 奇妙な果実 (2015-3)

f:id:montana_sf16:20220410212448j:image🎦Billie Holiday : The Commodore Records - YouTube

2015年4月7日はビリー・ホリデイが生まれてからちょうど100年目に当たります。もう100年かと思う反面、わずか100年かとも思います。少なくとも自分の祖父母よりは若いですし、彼女が活躍していた時期は両親の青春時代です。ジャズ・クラシックス中のクラシックです。「これらの演奏が含まれていないジャズ・コレクションはまことに貧相なものだ」とはジャズ評論家のグレン・クルトの言葉です。それほど定番中の定番です。ビリー・ホリデイ自身がジャズ・ジャイアントですけども、彼女のカタログの中でもコモドア・レーベルに残した録音の数々は彼女の最高傑作として知られています。何と言っても代表曲「奇妙な果実」が含まれていますから。確かにこの曲は凄いです。詩人ルイス・アレンの詩にビリーとピアノのソニー・ホワイトが3週間を費やして曲をつけました。その詩は、リンチに遭った黒人が木に吊るされている情景を描いたものですが、妙に静かな情景描写だけからなっています。それが返って凄味を増しています。糾弾するでもなく、泣き叫ぶでもない。深い悲しみと絶望を通り越した心情が、強い陽射しに磔になったような情景に埋め込まれています。それをビリー・ホリデイが、人種差別故に亡くなった自身の父親の想い出を重ねて歌います。「エレジーではない。告発のドキュメントでもない。不用意に聴くと怪我をする」絶唱です。遊び半分のクラブ客に初めてこの歌を披露した時、「歌い終わっても、一つの拍手さえ起らなかった。そのうち一人の人が気の狂ったような拍手をはじめた」。後は推して知るべしです。

f:id:montana_sf16:20220717213246j:image f:id:montana_sf16:20220717213310j:image f:id:montana_sf16:20220717213325j:image 
f:id:montana_sf16:20220717213345j:image f:id:montana_sf16:20220717213413j:image f:id:montana_sf16:20240407095207j:image🎦Billie Holiday - "Strange Fruit" Live 1959 [Reelin' In The Years Archives] - YouTube

💿️Billie Holiday - "i´ll be seeing you" - YouTube

「奇妙な果実」は1939年の録音です。当時、ビリーはそれまでのカウント・ベイシー楽団などの楽団専属歌手から独立したばかりです。そこにこの曲の大ヒットが生まれます。大手レコード会社は録音を拒否したために弱小コモドア・レーベルへの吹き込みです。結局、この曲は彼女の最大のベストセラーになります。この作品は、コモドア・レーベルに残したセッションの記録です。1939年4月、1944年3月と4月です。当時はLP時代ではありませんからディスコグラフィーも複雑ですが、これはマスター・テイク盤で全16曲収録です。「奇妙な果実」以外の曲も素晴らしいです。なんていうこともないスタンダード曲も彼女のねっとりとした歌唱によって凄い曲に生まれ変わっています。その比類ない歌唱力は思わず正座して聴いてしまう迫力です。SP盤に残された録音はとても良いです。これはもちろんCDなのですが、近年のクリアな録音よりもビリー本人の息遣いが感じられるように思います。控えめなバックの演奏も程よい音量でビリーの歌声が際立ちます。壮絶な人生を生きたビリー・ホリデイです。神が彼女に与えたもうた試練の数々は常人の想像をはるかに上回るものですが、それもこの歌唱を作り出すためだったのかと思うと、まるでキリストのような人です。人々の苦難を一手に引き受けて、それを歌に変える。凄いです。。😔

Billie Holiday / Billie Holiday (1946 Commodore)

参照:「ジャズCDの名盤」悠雅

ホワイトスネイク カム・アンド・ゲット・イット (2014-6)

f:id:montana_sf16:20230406133903j:image💿️Whitesnake - Come An' Get It (1981) (2007 Remaster) - YouTube

ホワイトスネイクは、ディープ・パープルから巣立ったデヴィッド・カヴァーディルとゆかいな仲間たちのバンドです。デヴィッド以外は頻繁にメンバーが交代しますので、デヴィッドのソロとしても良かった気もしますが、やはりバンドへのこだわりがあるのでしょうね。この作品はホワイトスネイクの「初期のキャリアを代表する1枚」です。ライナーノーツには、そう聞かれて、「全くその通りだ」「オリジナル・ホワイトスネイクがレコーディングしたアルバムの中で、最も完成度の高い作品だと思う」と答えるデヴィッドさんが活写されています。当時のホワイトスネイクは、ほぼオリジナル・メンバーでしたが、キーボードとドラムスは元ディープ・パープルのジョン・ロードさんとイアン・ペイスさんになっています。まるでディープ・パープルじゃないかと当時は思ったものです。しかし、音楽は随分と違います。ホワイトスネイクは後にアメリカで大成功を収めることになりますが、この初期の作品を聴いても、とてもアメリカンな感じを受けます。ブルースを基調としたハード・ロック路線です。個人的には、サザン・ロックの中では、最もブリティッシュハード・ロックに影響を受けたと言われるレイナード・スキナードを思い出しました。かといってブリティッシュ・バンドで最もアメリカンというわけでもありませんケド。ジャケットは猥褻だということで、アメリカで発売禁止になり、差し替えが行われています。これはオリジナル・ジャケットの紙ジャケ盤ですが、どこが猥褻か分かりますか?小さい写真だと分かりませんネ?🤔 大きな写真でもスケベな人しか分からないと思います。ま、そんな逸話もとてもハード・ロック的です。蛇とリンゴ。ヘビメタの王道を行く堂々たるジャケットです。サウンドの方も真っ向勝負のハード・ロックです。

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f:id:montana_sf16:20220314071517j:image f:id:montana_sf16:20220314071535j:image🎦Whitesnake - Don't Break My Heart Again (Official Music Video) - YouTube

ヘビメタという言葉を使うには、ブルースっぽいので、あえてハード・ロックとしてみましたが。デヴィッドは、パープルで発掘された才能です。彼らがいなければ、ショップ店員からいきなり音楽でスーパースターになることはありませんでした。そうした恩義を感じてだろうと思いますが、恩人の二人をバンド・メンバーに入れています。しかし、バンドはもはや完全にデヴィッドのものですから、恩人枠で入れてもらっても長続きはしないことは明らかです。聴けば分かるさジョンのキーボードですけれども、あまり大活躍しているとは言えません。いい味を出している場面もありますが、概ね地味です。ここは素直にデヴィッド中心に楽しむのが正解です。パープル時代は、グレン・ヒューズさんというもう一人のボーカリストがいました。向こうの方が不満が大きかったですが、彼も一人で思い切り歌いたかったことでしょう。ここではさらに生き生きとしています。楽曲は全般にキャッチーなメロディーを持っていますし、長い楽器のソロが入るわけではないポップな仕様になっています。ポップと言い切るにはハードですけれども、とても聴きやすいロックなアルバムだと思いますが、ど‐でしょう。

Come An' Get It / Whitesnake (1981 Sunburst)

サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン(2014―1

f:id:montana_sf16:20240403135945j:image f:id:montana_sf16:20240403144134j:image💿️Sarah Vaughan with Clifford Brown - Sarah Vaughan - YouTube

当然ながらサラ・ヴォーンは大御所ですけども、このアルバム・ジャケットは漫画的に可愛いです。何とも愛くるしいですよね。当時、サラさんは30歳くらいですが、この写真ではもっと若く見えます。この作品は、もともと「サラ・ヴォーン」というタイトルで発売されていますが、再発時に「サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン」と名前が変わりました。夭折したトランペッター、クリフォード・ブラウンの歌伴の傑作の一つであることを宣言したということでしょう。クリフォードの歌伴としては、ヘレン・メリルとの作品の方が有名ですけど、この作品も負けてはいません。巷間、傑作として人口に膾炙することが多い名作であることは間違いありません。実を言うと自分のジャズ・ボーカル初体験作品でもあります。参加ミュージシャンは、ピアノにジミー・ジョーンズ、ベースにジョー・ベンジャミン、ドラムにロイ・ヘインズというサラのレギュラー・トリオに、クリフォード・ブラウンのトランペット、ポール・クィニシェットのテナー・サックス、ハービー・マンのフルートが加わっています。さして、ジャズに造詣の深くない自分にはクリフォード・ブラウン以外のミュージシャンは全く馴染みがありません。スーパーなスターではないということだと解釈しますが、違っていたらご容赦ください。~続⤵️

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f:id:montana_sf16:20240403154528j:image f:id:montana_sf16:20240403154543j:image💿️Sarah Vaughan with Clifford Brown - Lullaby of Birdland (EmArcy Records 1954) - YouTube

ある評論に、どんな凡庸なミュージシャンも神がかって聞こえるのがジャズの名盤だというのがありました。これ以外に知らない彼らを凡庸というつもりはありませんが、少なくとも、このアルバムでの彼らは、自分には神がかって聞こえます。特にジョーンズさんのピアノ。高田敬三さんのライナーでは、「眠気を誘う様なピアノ・ソロ」とか「春の陽光を思わせる様な華麗なピアノ・ソロ」と形容され、「サラの歌に寄り添うようにして、細かな指さばきから、リリカルに美しいフレーズを紡ぎ出す」と的確に表現されています。リズム・セクションも控えめな録音ですが、素晴らしいです。そんなミュージシャンと一緒に天才クリフォード・ブラウンの力強くて明るくて溌剌としたトランペットが冴えわたっています。このバランスが素晴らしい。そして、徹夜で遊んでいても、リハーサルを必要としないという怪物のようなサラさんのボーカルはやはり凄いです。彼女自身もこの作品をベストの一つにあげていたことがあるそうですから、若い頃の自信作なんでしょうね。そりゃそうでしょ-。聴けばわかります、音もいいです。1950年代の作品というのはだいたい音がいいんですよね。何なんだ?、と思います。そんな良い音で、演奏も歌も完璧にジャズを奏でます。冒頭の「バードランドの子守唄」から徹底的にやられます。これがジャズ・ボーカル初体験でしたから、ハードルは上げるだけ上げてしまったことになります。なので、ちょっとやそっとのボーカルには納得しませんからぁ~。。自分。

RCサクセション EPLP (2013-7)


f:id:montana_sf16:20240402105131j:image🎦わかってもらえるさ/忌野清志郎 SCREAMING REVUE - YouTube

「ある日作成しよう」でRCサクセションというバンド名になった、と長い間信じてきましたが、どうやら違うんですね。でも、本人たちがテレビでそう言っていたのを見たような気がします。冗談だったんですネ。まんまと引っかかりました。この作品は元フォークのRCがエレキ化して以降のシングル曲を集めたベスト盤です。まだまだ若かった自分にとってはこの「元フォーク」というところが引っかかって、彼らに偏見をもっていたものですから、あまり同時代には聴いてませんでした。そんな自分の偏見を見事に打ち砕いたのは85年にロンドンとフィラデルフィアをメイン会場として行われたライブ・エイドでの忌野清志郎さんのパフォーマンスでした。説明が必要でしょ―かネ。ライブ・エイドは日本でもテレビ中継され、その合間に日本のアーティストもパフォーマンスを行いました。清志郎さんはRCではなくて、デンジャーというバンドでの出演でしたが、その♪馬鹿にされても働く大人しい人がいる♪のボーカルは圧巻でした。これは凄くネ?😳 ということで、過去の態度を悔い改め、悔悛の情を示すためにRCのベスト盤を買いました。それがこのアルバムに形を変えて今、手元にあるわけです。ところで、自分がまだ子どもの頃には、そもそも日本語でロックができるのか?、といった「日本語ロック論争」なるものが真剣に議論されていたよーです。それほど西洋と日本は遠かったんです。しかし、その議論に終止符を打ったのは忌野清志郎桑田佳祐ではないでしょうか。以降、誰も疑問を持たなくなり、そういう議論はほとんどなくなりましたから。。~続⤵️

🎦RCサクセション トランジスタラジオ - YouTube

🎦忌野清志郎 雨あがりの夜空に - YouTube

🎦スローバラード RCサクセション 生活向上委員会 - YouTube

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とはいえ二人の日本語のロックへの乗せ方は対照的です。巻き舌の英語的な発音で日本語を載せていく桑田さんに対し、徹頭徹尾日本語らしい日本語でロックに向かったのが清志郎さんです。それもポルノグラフィティーの昭仁さんのような、ハキハキした明治の日本語ではなくて、鎌倉時代というか弥生時代の日本語というか、つまり清志郎さんのボーカルには民俗的な香りがするんです。なんてゆーか大脳の奥の方がうずくんですよね。本当に凄いボーカルだと思います。『不世出の大ボーカリスト』こういう人は二度と出てこないのではないでしょうか。ホントにホント-に凄い。あ!、スミマセン😓💦、すっかりアルバム紹介を忘れるところでした。このアルバムの中では、エッチな歌とも読める「雨上がりの夜空に」と「トランジスタ・ラジオ」の二曲がクラシックとなっています。ヒットしたので、偏見時代の自分もリアルタイムで聴いたことがありました。なかなかの名曲です。楽曲は典型的な日本のロックです。しかし、清志郎さんのボーカル自体は高く評価しますが、当時を振り返ると、やや苦手な部類に属するサウンドでした。ま、そ-いうわけですから、ここらで口をつぐむことにします。。🤐

EPLP/ RCサクセション (1981 キティ)

忌野清志郎 ベストヒット清志郎 (2019-2)

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🎦ベストヒット清志郎 - YouTube

忌野清志郎が「虹を渡り銀河系遥か彼方へ」旅立ったのは2009年5月のことでした。ほぼ10年が経過しようとしていますが、生前と変わらない存在感を発揮し続けており、こうして新しい編集アルバムが発表されるに至りました。本作品は、通常のベスト・アルバムとは異なり、コマーシャルや映画、テレビとのタイアップ曲を時系列で並べたアルバムです。曲の発表時期ではなくて、タイアップされた時期に着目した時系列であるところが本作品の特徴です。そのため、最も新しいラスト4曲がRCサクセションの曲になっています。さらに絶妙の位置に「スローバラード」や「たとえばこんなラヴ・ソング」というRCクラシックスが現れたりして、聴いているこちらの耳がぴくっとなります。偶然とはいえ面白いです。最初の1曲は「こんなんなっちゃった」です。ミノルタのCMとタイアップしたのは1981年のことで、アルバムとしては1982年の「BEST  POPS 」収録です。RCサクセションのデビューは1970年ですから、デビュー10年を経て初のタイアップでした。意外だったのは2曲目に「い・け・な・いルージュマジック」が出てくることです。坂本龍一と組んだ楽曲で資生堂のキャンペーンに使われ、チャート1位を獲得しました。

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苦節10年を経てRCの名前が人口に膾炙するようになった矢先、この曲で清志郎の人気が爆発しました。何となくもっと後のことかと思ってました。とはいえ、既にこの時からベテラン感が漂ってましたから。いずれにせよ、ここからは怒涛の快進撃です。ワンフレーズだけで視聴者に強い印象を残すことができる清志郎です。これほどタイアップに向いている人も珍しいですが。「デイ・ドリーム・ビリーバー」に至っては20年以上の間に3回もCMに起用される人気ぶり。聴き慣れた楽曲も清志郎が歌うことで、オルタナティブな魅力を発揮することができるので、商品の安心感と斬新感を一挙に表現できる。格好の素材です。しかし、聴き進めていくと、どうしたってしょうがないことなのですが、新曲が途切れてしまいます。タイアップは2009年以降も続き、ここには7曲も収録されています。未だに人気は衰えないわけですけど、新曲はもうありえないという事実が改めて悲しいです…😢 ここにはRCのみならず、タイマーズや2・3’s、ジョニー・ルイス&チャーとのユニットによる曲、「ちびまる子ちゃん」のエンディング・テーマや糸井重里の「パパの歌」など、清志郎の全キャリアに及ぶ選曲が図らずも達成されており、しみじみと軌跡を振り返ることができます。注目したいのはスティーヴ・クロッパーがプロデュースした2曲。「メンフィス」所収の「雪どけ」ではオーティス・レディングの姿を重ねることができるボーカルですし、最後のスタジオ作「夢助」の「誇り高く生きよう」は歌声に鬼気が迫っています。どんな歌を歌っても清志郎は言葉がきちんと聴き取れます。独特の溶けるようなボーカルでも言葉は明瞭。そこもタイアップ向きです。2枚組2時間半を聴き通すと、忌野清志郎の存在の大きさを思い知らされます。まさに不世出の大ボーカリストでした。

Best Hit Kiyoshiro / Imawano Kiyoshiro (2018 ユニバーサル)

🎦THE TIMERS - デイ・ドリーム・ビリーバー (Hammock Mix) - YouTube

🎦忌野清志郎 IMAGINE - YouTube

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ラッシュ 西暦2112 (2018-12)

f:id:montana_sf16:20220803010615j:image f:id:montana_sf16:20220805171830j:image💿️2112 (1976) - Rush [Full Album] - YouTube

「22世紀の人類の運命は果たしていかに」!ラッシュは自分たちが崖っぷちに立たされている時に、自分たちよりも22世紀の人類の行く末を案じていました。やはり、それくらいの度量がなければ、スーパー・グループにはなれなかったことでしょう。カナダを代表する三人組ハード・ロック・バンド、ラッシュは1968年に結成され、1974年にデビューしました。その後、彼らはハイペースでアルバムを発表し、1976年発表の本作品はすでに4枚目となります。今では考えられないペースです。しかし、順調とはいかず、これまでの三作はいずれも米国では100位にも入らなかった上に、その中でも人気が下降線にありました。ツアーも自ら「ダウン・ザ・チューブ・ツアー」と揶揄する調子で、観客数が減り続けたそうです。マネージャーが胃潰瘍を患うほどの低迷ぶりです。レコード会社は、3作目のプログレッシブ路線の行き過ぎがよろしくないと決めつけました。デビュー作発表後に作詞家兼ドラマーのニール・パートが加入して以降のプログレッシブ路線です。しかし、ラッシュはブレませんでした。♪答えは、あなたの頭の中にある、それに従ってお行き、あなたの心を頼みにして、それをあなた自身の歌の鼓動にするのだ♪(沼崎敦子訳)とアルバム収録の「サムシング・フォー・ナッシング」にある精神を貫きます。

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f:id:montana_sf16:20220805171220j:image f:id:montana_sf16:20220805171259j:image f:id:montana_sf16:20220805171239j:image🎦Rush - 2112 - 12/10/1976 - Capitol Theatre (Official) - YouTube

🎦2112: Overture / The Temples Of Syrinx / Discovery / Presentation / Oracle: The Dream /... - YouTube

A面に20分に及ぶ組曲を配したよりプログレッシブな大作はレコード会社を怒らせはしましたが、結果的にラッシュの名を確立する名盤となりました。カナダでは2作目に続いてトップ10入りし、米国でも61位まで上昇します。そればかりではなく、結果的に米国だけで300万枚を超えるラッシュ有数のヒット作品になりました。息が長い。ラッシュがその後目立つたびに手に入れる人が増えていったという理想的なロングセラー作品です。これを名盤といわずして何としましょう。組曲は、アイン・ランドというカナダ出身のSF作家の作品を題材にしています。西暦2112年の世界は隅々まで統制が行き届き、音楽でさえも司祭様たちに面倒を見て頂いているような世界。そこで若者が手にしたギターによって自由を発見するというようなお話です。シンセサイザーを導入し、多重録音を駆使してプログレッシブなハード・ロックが展開されていきます。堂々たる大作です。B面の小品集も多彩な表情を見せる佳曲揃いですから、アルバムとしての充実度は高い。ラッシュはこれで一皮むけました。サウンドは典型的な1970年代のハードロックです。ブルースに根差したハード・ロックから、プログレッシブなハード・ロックサウンドへの変化は、王道とも言える進化です。しかし、それは後知恵のなせる業。当時のレコード会社の理解は及びませんでした。ラッシュは、ヘビー・メタルという言葉が誕生するかしないかという時代に、そのサウンドを切り拓いていったバンドの一つです。堂々たる大作は裏ジャケの集合写真に代表されるように、時代を色濃く反映しています。         この時代のロックは良かった。。😔

2112 / Rush (1976 Mercury)

TOTO 宇宙の騎士 (2020―1)

f:id:montana_sf16:20240401135304j:image f:id:montana_sf16:20240401135311j:image💿️Toto - 1978 - Toto - CD - YouTube

TOTOのデビュー・アルバムは1978年の発表です。英国のパンク/ニュー・ウェイブに夢中になっていた自分にとって、TOTOは敵のような存在でした。楽器ができないことを良しとするパンクの価値観からすれば真逆の存在でしたから。何といってもTOTOはロサンゼルスを中心に活動する一流スタジオ・ミュージシャンたちによって結成されたバンドです。デビュー・アルバムを発表するまでに、数多くの名作にその名を刻んでおり、すでにキャリアは十分すぎるほどでした。バンド結成の直接のきっかけは、高校時代のバンドメイト、デヴィッド・ペイチジェフ・ポーカロボズ・スキャッグスの名作「シルク・ディグリーズ」で顔を合わせたことだそうで、そこに高校を同じくするスティーヴ・ルカサーとスティーヴ・ポーカロが加わります。さらにベースのデヴィッド・ハンゲイトとボーカルのボビー・キンボールが加わって6人組としてのスタートです。レコード会社はコロンビア・レコード、デビュー作のプロデュースはTOTO自身。デビューではありますが、スタジオ経験豊富な人たちだけにスムースだった模様です。このデビュー・アルバムからは、「ホールド・ザ・ライン」が全米チャートで5位となる大ヒットを記録し、アルバム自体も9位、200万枚を売る大ヒットです。音楽業界では名が通っていた人たちが、期待通りの結果を出したわけですから天晴です。ここ日本ではまずバンド名が話題になりました。~続⤵️

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何といってもTOTOは当時の東陶機器株式会社、今のTOTO株式会社が便器などに使っていたロゴとして知らぬ者は日本にはいなかったわけですから。当時はバンド名を巡ってさまざまな憶測が流れたものです。そうやって本人たちの与り知らぬところで話題になったのですが、実は彼らはとても日本人好みのサウンドを奏でていることがすぐに知れ渡ります。当時、パンクにうつつを抜かす自分を尻目に楽器ができる友人たちはこぞってTOTOのファンになっていました。本作品は「宇宙の騎士」という邦題がつけられました。TOTOのままでは売りにくいと思ったのでしょう。二人のキーボード・プレイヤーのスペイシーなサウンド・メイクと、分厚いボーカルが、ジャケットの宇宙イメージを増幅させていたことからすれば自然な題名です。曲は「シルク・ディグリーズ」で「ロウダウン」などをボズと共作していたデヴィッド・ペイチが大半を書いています。さすがというべきか、どの曲もよく出来ています。スタジオ・ミュージシャンは曲作りが苦手なイメージがありますが、そんなことはないです。サウンドはアダルト・オリエンティッド・ロック、AORそのものです。AORとはどんなサウンドかと言われればこんなサウンドです。彼らこそがジャンルを創ったといっても過言ではありません。AORと呼ばれるアルバムには大抵TOTOの誰かが参加していますから。緻密な音作りによるソウルフルでジャズのセンスも織り込んだポップなロックが彼らの身上で、当時は毛嫌いしていた自分の耳にも染みついていることが分かります。何でもできる達者な人たちによるこれといった瑕のない大したアルバムです。

TOTO / TOTO (1978 Columbia)

マーヴィン・ゲイ 愛のゆくえ (2018-11)

f:id:montana_sf16:20220401110409j:image💿️Marvin Gaye - What's Going On (Full Album) - YouTube

「ホワッツ・ゴーイング・オン」と言ってもTASTE (ロリー・ギャラガー🎸)のワイト島ライヴ ではありません。てゆーか、ロック耳👂️⚡の皆さまにはあらかじめ言っておきます。マーヴィン・ゲイはめっちゃ歌が上手いんです。。と、骨の髄まで思い知らされました。声を張るでもなく、呟くでもなく、軽く歌っているようにも聴こえます。しかし、この歌声には底知れない魅力が詰まっています。「ホワッツ・ゴーイン・オン」はそのメッセージ性に焦点が当たりがちですけど、その魅力はまずはその歌声とジャジーサウンドです。加えて、たとえばB面の1曲目「ライト・オン」の、ピアノも動員したシンプルなリズムの深い深い魅力。ノンストップのA面もさることながら、見過ごされがちなB面も工夫された極上の洗練されたサウンドで構成されており、ため息がでるほど美しいです。つまり何が言いたいか?というと、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」はソウル・ミュージックの世界に新しい時代を築いた名作中の名作として、数々の物語に彩られていますが、とにもかくにもまずはそのサウンドが素晴らしいです。(o^-')b !👍️ 何しろ、もはや普遍的とも言うべきか?、本作の伝えるメッセージは重く、なおかつ今でも有効です。戦争、貧困、環境問題、差別などなど。もっぱらラブ・ソングを歌っていたマーヴィンが社会問題を歌う。言うならばマーヴィンの弟がベトナム帰還兵であったことは、メッセージのリアリティを高めています。この頃、デュエット・パートナーだったタミー・テレルが若くして亡くなったことも大きな陰を落としています。そのことがなければ、モータウンの方針に反して自我を貫き通すこともなかったのかもしれません。どん底から這い上がった男は強いです。

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この作品には「モータウン史上初」が詰まっています。まずは、コンセプト・アルバムであること、それもメッセージ性が強いこと、ボーカルを多重録音していること、ミュージシャンの名前をクレジットしたこと、歌詞が印刷されて提供されたこと。そんなこんなもひっくるめて、モータウン工場から出荷された作品ではなく、アーティストが手作りした作品となったと言えます。社長は売れないと決めつけていたそうですから、アーティストの大勝利です。後に与えた影響はスティーヴィー・ワンダーを見れば一目瞭然です。ミュージシャン名のクレジットは彼らのやる気を引き出したに違いありません。顔が見える演奏は生き生きしているように聴こえます。アルバム全体を通じて、隅々にまで細かく気が配られているのは、彼らのやる気があればこその結果だと思います。本作からは、「ホワッツ・ゴーイン・オン」の他に、「マーシーマーシー・ミー」、「イナー・シティ・ブルース」と3曲のトップ10ヒットを生み、アルバム自体も6位と大ヒットしました。こんな名作なのに1位じゃないところがまた勲章です。歴史的作品というのはそ‐いうものなんです。ソウル・ミュージックはこの作品によって方向性を決定づけられました。都会的で洗練された柔らかなビートを有するソウル・ミュージックは本作に端を発すると言えそうです。今に至るも一大潮流ですから凄い。間違いなく名盤中の名盤。大名盤です。

What's Going On / Marvin Gaye (1971 Tamla)

レッド・ツェッペリン プレゼンス (2014-3)

f:id:montana_sf16:20210928132736j:imagef:id:montana_sf16:20240331203318j:image💿️Presence (Remaster) - YouTube

奇妙なオブジェクトが置かれることによって、幸せな一家団欒の写真の胡散臭さが倍増します。ヒプノシスによるジャケットはツェッペリンの音楽の不思議な魅力を余すところなく表現しているようです。 個人的には、この作品を「ツェッペリンの最高傑作」と信じて疑いません。ロックの進化系統樹を描いてみると、ツェッペリンだけで一つの枝になっているのではないかと思われる唯一無比の存在感を誇る彼らの作品の中でもとりわけ輝いています。もちろん皆さんの中には初期からの Ⅰ~Ⅳ 他、それぞれ思い入れある作品があることは承知しています。ま、それはそれとして自分だけではなく、ジミー・ペイジ・リーダーもこの作品を最重要作品だと言っていますのでご安心ください…😌 横綱昇進後、順風満帆だった彼らですが、75年8月からのワールド・ツアーを前に、ギリシャロードス島で、ロバート・プラントさんが自動車事故に遭い、重傷を負ってしまいます。ツアーはキャンセルされてしまいますが、怪我をしたのが足でよかったわけで、静養先のカリフォルニア州マリブにて、新作の楽曲作りが始まりました。メンバーの怪我のおかげで創作意欲がより高まるという思わぬ効果もあったのか、11月には早くもミュンヘンのスタジオに入り、何と3週間で全7曲が仕上げられたということです。一気呵成とはまさにこのことです。~続⤵️

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f:id:montana_sf16:20240331210330j:image f:id:montana_sf16:20240331210412j:image f:id:montana_sf16:20240331211749j:image🎦Led Zeppelin - Achilles Last Stand (Live in Los Angeles 1977) - YouTube

アルバムは彼らの代表曲中の代表曲「アキレス最後の戦い」で幕を開けます。10分を越える大作ですが、疾走感は半端なく、一気に聴いてしまう文句ナシの傑作です。個人的にも"ZEPP"の曲の中で、この曲が一番好きです。全体の構成も素晴らしく、まさにハード・ロックの鑑です。全部で7曲ありますが、今回はキーボードなども使われていないそうで、ドラム、ベース、ギターだけで演奏されているということです。トラッド調の曲もなく、アコースティックもない。最後の曲「一人でお茶を」がスロー目のブルースである他は、ハードなロックばかり。前作がバラエティに富んだ懐の深さを見せつける作品だったのに対して、こちらは全体が同じ色に染められています。つまりこれこそがツェッペリンというサウンド展開です。メンバー全員が素晴らしい演奏を繰り広げるのですが、とりわけボンゾのドラムは凄い。どすどす響いて、これだけ追っていても楽しいです。タイトルの「プレゼンス」もいいです。横綱にふさわしい。自信に満ち溢れた作品であることが分かります。しかし、この作品は、英米で1位となり、日本でも2位となりましたが、彼らの作品の中では最も売れていないことになってます。それって思うに「ハッタリが少ないから」ではないかな?🙄 と思います。これまでの作品には聴く人の思い入れを許容するハッタリが効いていましたが、この作品はそういうところがあまりありません。つまり神話を共に作っていくという共犯関係に入りにくいわけです。裏を返せば、それだけツェッペリンの面々がリラックスして音楽と向き合った作品とも言えるのではないかと思います。その結果出来上がった作品が悪いワケがない。別のステージに上がって、また一つの高みに達した感すらあります。最後の「一人でお茶を」に悶えながら今日は寝ることにします。 でゎでゎ~…(^_^)/♪

Presence / Led Zeppelin (1976 Swan Song)

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※21.9.28 追記 → オマケ記事🤭💦⤵️

11歳の日本人ドラマーよよか レッド・ツェッペリン「Achilles Last Stand」のドラムカヴァー映像公開👇️ https://amass.jp/151226/

ビリー・アイリッシュ ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー? (2019―6)

f:id:montana_sf16:20230707160741j:image💿️WHEN WE ALL FALL ASLEEP WHERE DO WE GO - Billie Eilish - Full Album - YouTube

話題のティーンエイジャー、ビリー・アイリッシュです。凄い凄いと言われるので、どんなもんじゃい?🤔 と思って、聴いてみたのですが、いや、これは凄いです。凄い、凄い、マジ凄い。とりあえずスタンディング・オベーションをしてみたくなります。2001年12月生まれのビリーは、13歳の時にウェブに楽曲をアップしたところ、1000万回を軽く超える再生を記録し、一躍時の人になります。その後も曲を発表し続け、アルバム発表前にすでに数十億回のストリーミング再生を達成しています。デビューから5年、ようやくアルバム形式での作品発表とあいなりました。こういう新世代のアーティストはいよいよアルバムなど発表しなくなるのではないかと危惧していただけに、素直に嬉しいです。やっぱり4、50分は欲しいんですよね。しっかり感動するには。すでにメディアの寵児となっている彼女ですが、このアルバムも徹底して兄フィネアスと二人で自宅のベッドルーム・スタジオで曲作りと録音をこなしています。何やかやで口を出すレコード会社をほぼ完全にシャットアウトしているところが若いのに凄いです。そもそも彼女は一度も学校に通ったことがないそうで、ホームスクールで教育を受けています。子どもを従順に躾けることを眼目とする日本の学校と違って、米国の学校は自由そうですが、それでも管理社会ではあって、そこからも自由であるというのはこれまた凄いことです。

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f:id:montana_sf16:20230708165803j:image f:id:montana_sf16:20230708114439j:image🎦Billie Eilish - bad guy (Official Music Video) - YouTube

🎦Billie Eilish - when the party's over (Official Music Video) - YouTube

アルバムはいきなり楽しげに♪インビザラインを取り外しました♪という語りで始まります。歯の矯正器具がようやく外れたんだそうです。これはさぞや嬉しいことでしょう。その喜びを皆で分かち合いたかったんでしょうね。ここは可愛いです。2曲目から楽曲が始まります。全米2位のヒットとなった「バッド・ガイ」です。割れたような低音のビートにのせて、バッド・ガイは自分だと主張するビリー。いきなりベッドルームっぽい感覚満載のドスの効いたダークなポップが全開です。「ユー・シュド・シー・ミー・イン・ア・クラウン」では日本の誇るアーティスト村上隆とコラボしたMVが話題です。ベッドルームには村上のキャラクター・クッションが置かれているそうですから、筋金入りの村上ファンなんでしょう。明るいだけのポップでないことがよく分かります。アルバムのジャケットを始め、コンセプトを決めた一曲が「ベリー・ア・フレンド」です。友達を埋めるという恐ろしいタイトルの曲です。ちょっとドアーズが入ったメロディーのこれまたダークな曲で、歯医者の機材音が使われるなど、自由度が高いです。宅録だけに全体に音数は少なく、シンプルなビートに自由自在なサウンドが組み合わさり、そこにティーンのダーク・サイドとブライト・サイドが交錯する歌声が胸に染みます。メンタルヘルスとも戦っているというビリーのリアルが迫ります。もうお手上げです。このアルバムの完成度は異様に高いです。どの曲にもストーリーがあり、いくらでも深掘りできそうです。ビートルズを幼少の頃に聴いて育ったという点だけが、自分のよすがです。とことん自由で勇気のあるサウンドが眩しすぎます。

When We All Fall Asleep, Wher Do We Go? / Billie Eilish (2019 Interscope)

ノラ・ジョーンズ ノラ・ジョーンズ (2016-11)

f:id:montana_sf16:20220414210606j:image💿️Norah Jones - Come Away With Me (FULL ALBUM) - YouTube

「『Don't Know Why』って、直訳すれば『何でだろう』ですよネ。」と誰かが指摘していたのが忘れられません。当時、日本ではテツandトモがブレイクして、巷では♪なんでダロ~、なんでだろう♪が頻繁に聞こえ始めていました。しかし、お気楽な日本を他所に、アメリカでは前年9月の同時多発テロ9.11の衝撃がまだ深く社会を覆っていました。そんな2002年2月にノラ・ジョーンズのデビュー・アルバムがひっそりと発表されています。全米チャート入りは3月、その後じわじわと人気を獲得して、2003年1月に発売46週目にしてトップを飾りました。静かに広く人々の間に広まっていったわけです。世界各国でも大ヒットし、結果的には2000万枚を売り上げるモンスター・アルバムになりました。

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ニューヨークで歌っていた彼女を発掘したブルーノートはさすがという他ありません。アレサ・フランクリンなどを手掛けた大物プロデューサー、アリフ・マーディンを起用したほどですから、それなりに成算はあったのでしょうが、ここまでとは思わなかったでしょう。ノラ・ジョーンズは幼い頃から母親の膨大なレコード・コレクションを聴いて育っています。アレサ・フランクリンレイ・チャールズ、ウィリー・ネルソン、ボブ・ディラントム・ウェイツジョニ・ミッチェルニーナ・シモンの名前が挙がっています。その後、テキサスの大学でジャズ・ピアノを専攻しますが、旅行のつもりで訪れたニューヨークにそのまま定住し、音楽活動をしているところをブルーノートのブルース・ランドヴァルに見いだされてデビューしました。ニューヨークに出てきてからはほんの2年くらいです。初めて「ドント・ノー・ホワイ」が流れてきた時には驚きました。ポピュラー音楽がどんどん派手になっていく中で、ゆったりとしたアコースティックな演奏にのせた、ちょっとハスキーなノラのボーカルには不意を突かれて、思わず感動してしまいました。コロンブスの卵じゃないですが、こんなにシンプルな音楽が人々の心をとらえることがまだあるんだという驚きです。9.11の後、世界が求めていたのは彼女の唄でした。少なくとも2000万人に彼女の唄が寄り添ってくれました。基本的にはノラ・ジョーンズを中心としたバンドによる演奏です。ノラも曲を作っていますが、大ヒットした「ドント・ノー・ホワイ」を始め、多くの楽曲はバンド・メンバーの手になる作品です。ノラ自身は後にそこに葛藤を見出すわけですが、ここでは大成功です。歌詞が途切れたところでも擦過音が残っているような、魅力的なかすかにハスキーな声でもって、ジャズのエッセンスを凝縮したような見事なボーカルです。他人の作品を歌っても、彼女ならではの作品になっています。余計なギミックを一切排して、時代を超越したオーガニックな音楽です。フォークっぽくもあり、ジャズでもあり、ブルース・フィーリングありと、聴けば聴くほど味わい深い。さすがは、時代を画する名盤です。素晴らしい。👏👏👏

Come Away With Me / Norah Jones (2002 Blue Note)